事故情報:水で膨らむボールの誤飲に注意

日本小児科学会雑誌では、小児科医が共有したほうがよい事故情報が掲載されます。2022年3月号の学会誌からの報告を共有したいと思います。

以下、学会誌の内容を一般の方向けに簡潔にまとめました。

高吸水性樹脂球の誤飲による腸閉, 日児誌 126: 580-582, 2022

 

(概要)

生後11ヶ月の男児。自宅の浴室の浴槽内で,水につけると膨らむボール(高吸水性樹脂)

で,本児は兄と遊んでいた.ボールの、大きさは1つあたり直径10~20 mm大で,膨らむと直径35~40 mm大になる。対象年齢は10歳以上と記載があった。同日深夜になって,腹痛,嘔吐が出現し,吐物に食残とボールの一部が混ざっていたため,誤飲を疑って,すぐに救急外来を受診した.成人の目撃はなかった.緊急開腹手術を要した。

 

高吸水性樹脂は,吸水後は、圧力をかけても吸収した水が戻りにくい特徴がある

https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20151001_1.pdfより引用。本例とは異なる例。(左)腸より摘出されたボール (右)購入時

高吸水性樹脂製品による誤飲,腸閉塞をきたした症例が国内外で散見されており,死 亡例も報告されている

・異物誤飲の多くは2週間以内に自然排泄する。しかし、この製品は腸液を吸収しながら、膨張が進行していき、腸を閉塞させてしまい、緊急手術を要する危険性が高い

・2015年10月,国内での報告例を受けて,国民生活センターから注意喚起が発信された

 幼児が水で膨らむボール状の樹脂製品を誤飲-十二指腸閉塞、開腹手術により摘出- (kokusen.go.jp)

誤飲例の多くは,生後6か月から2歳と異物誤飲しやすく症状を訴えにくい年齢であり,受診時に誤飲したかもしれないという事前の病歴がない症例も複数認めていた

・本製品は、レントゲンに写らず、CTでも腸液との区別が難しい

 →診断に難渋し、治療を開始までに時間を要することもある

 

これは買わないようにするしかないですね。パッケージに腸閉塞の危険も記載すると書かれていましたが、限りのあるスペースで一目で分かるように注意喚起するのは難しいかもしれない。

私にできることとして、情報を繰り返し、発信していきたいと思います。