自家製ホウ酸団子の誤食に注意

日本小児科学会雑誌では、小児科医が共有したほうがよい事故情報が掲載されます。2021年1月号の学会誌からの報告を共有したいと思います。

以下、学会誌の内容を簡潔にまとめました。

日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert (傷害速報) No.97 ホウ酸団子の誤食による急性薬物中毒 日児誌2021: 125:102-103

<事故の概要>

1歳男児が、5分ほど目を離した間にゴキブリ対策用のホウ酸団子を誤食した。口の中より掻き出したうえで、救急車を要請した。幸い、症状なく経過した。

 

<ホウ酸団子の誤食事故について>

ホウ酸は,鉱石や土壌に含まれている無色・無臭の結晶で,植物の必須微量栄養素でもあります。

殺菌作用を有することから,医薬品(特に眼科領域)や化粧品の防腐剤に含まれているだけでなく,ゴキブリやシロアリの駆除などに利用されています。

・ホウ酸は,消化管,粘膜から吸収され,12 時間以内に 50%が排泄されるものの、80%以上が排泄されるには5 日以上を要します。

致死量乳児で 2~3 g,幼児で 5~6 g,成人で 15 g 以上とされており、1回の摂取で重症化することはまれです。

・嘔吐,下痢,腹痛などの消化器症状や皮疹を起こし,脱水,循環不全,腎の尿細管壊死が死因となりえます。

・日本中毒情報センターの報告によると,1999~2008 年に 5 歳以下の乳幼児によるホウ酸の誤食は 4,166例が報告されており,全家庭用品のなかで 10 番目に多かったが,6 割が医療機関への受診を必要としませんでしたhttps://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/120511kouhyou_2.pdf

米国の地域の中毒情報センターの報告でも,784 例のうち,88%は特に症状を認めませんでした。その一方で、少数ながら重症例は発生しています.

(Litovitz TL, Klein-Schwartz W, Oderda GM, et al. Clinical manifestations of toxicity in a series of 784
boric acid ingestions. Am J Emerg Med. 1988; 6: 209-213) 

・ゴキブリ駆除剤(誘引食毒剤)のホウ酸含有率は,一般的には 10~20%が適量とされています。しかし、インターネット上でホウ酸団子の作り方を指導するサイトが多数ありますが,ホウ酸の含有率が 50%近くなるものもあります。
→高いホウ酸団子を作成することがないよう,適切な含有率の作り方を指導,啓発するといった対策が必要

・年少児のいる家庭では、使用を避ける、使用する必要のない時は、手の届く場所に設置しない、現物を容易に摂食することができないような容器に収納して設置するなどの

対策が必要です。  以上

 

足柄にいたときは、年に何例か経験したんですが、ここ最近は見ないですね。