子宮頸がんワクチン接種後の副反応について

今日は、保護者の皆様が一番気になるワクチンの副反応についてお話ししていきたいと思います。

まずは一般的な副反応について

サーバリックスRの国内臨床試験では、局所 (接種部位) の副反応として、疼痛 (99%), 発赤 (88.2%), 腫脹 (78.8%) で、全身性の副反応としては、疲労 (57.7%), 発熱 (5.6%), 筋痛 (45.3%), 頭痛 (37.9%), 胃腸症状 (24.7%), 関節痛(20.3%), 蕁麻疹 (2.6%)が認められています。

サーバリックスの基本情報(薬効分類・副作用・添付文書など)|日経メディカル処方薬事典

ガーダシルR国内臨床試験では、局所 (接種部位) の副反応として、疼痛 (82.7%), 紅斑 (32%), 腫脹 (28.3%) で、全身性の副反応としては、主なものとして発熱 (5.7%), 頭痛 (3.7%)が認められています。

医療用医薬品 : ガーダシル (ガーダシル水性懸濁筋注シリンジ)

2015年9月の検討部会では、接種された338万人 (約890万回接種) のうち、副反応疑いの報告があったのは2,584人 (0.08%) でした。そのうち、その後の経過が把握できた1,736人のうち、7日以内の回復は974人 (56.1%)で、最終的に回復軽快し通院不要となつたのは1,550人 (89.1%)という追加追跡調査結果が示されました。副反応追跡調査結果について|厚生労働省

さて、厚労省の積極的な接種勧奨の一時中止のきっかけとなった、持続的な疼痛と運動障害をみとめたケースについてです。副反応検討部会では、広汎な疼痛と運動障害をみとめた例について、1) 神経学的疾患, 2)中毒, 3) 免疫反応, 4)心身の反応の4つが仮説として考えられましたが、検討の結果、1)~3)は否定的で、針を刺した痛みをきっかけに心身の反応が現れ、色々な条件のもとで、これらの症状が慢性化したことが妥当とされました (転換症状・機能性身体症状)

(岡部信彦.どうするHPVワクチン:私の意見・提言. 外来小児科 2019. 22 (1); 66-70)

一部の研究者より、免疫異常が生じていることが報告されておりますが、いまだ仮説の域を出ません。海外で約400万人規模の調査で、HPVワクチン接種と自己免疫が関与する、多発性硬化症脱髄性疾患との相関は認められなかったと報告されています。

(Scheller NM, et al, Quadrivalent HPV vaccination and risk of multiple sclerosis and other demyelinating diseases of the central nervous system. JAMA. 2015 Jan 6;313(1):54-61.)

なお、最近WHOでは、ITSR (Immunization Triggered Stress Response) という、ワクチン接種をきっかけとしたストレス反応という概念について議論されています。ワクチン接種前後に生ずる不安・恐れをきっかけに生ずる一連の痛み、恐怖症、身体変化などで、周辺や社会的環境の影響を受けやすく、それをふせぐためには丁寧な説明・接種が必要とされています。

 

子宮頸がんワクチンを接種していない場合にも疼痛や運動障害など多様な症状を認めることがあります名古屋市で実施された疫学調査によると、ワクチン接種により、痛みや運動障害, 睡眠障害など24項目の症状が増加していないことが明らかになりました。

アンケート調査なので、記憶バイアス (記憶に基づくので正確性が落ちる)などの限界点はありますが、非接種者でも

多様な症状を認めうる点が重要です。

(Suzuki S, et al.No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: Results of the Nagoya study. Papillomavirus Res. 2018 Jun;5:96-103)

また、厚労省の研究班の全国疫学調査によると、HPVワクチンを接種後に生じたとされる症状と同様の多様な症状を呈するものは、12~18歳女子では、人口10万人あたり40.3人と推計されました。そのうち、HPVワクチン接種歴のない女子においても、人口10万人あたり20.4人と推計され、HPVワクチン接種歴がなくても多様な症状を呈するものが一定数存在することを示されました。この調査結果より、HPVワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係は言及できないと結論されています。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000161352.pdf

 

まとめ

・HPVワクチン接種後は、大部分が、接種部位の疼痛や腫脹をみとめます

・接種者のうち、副反応として報告されたのは(因果関係の不明なものを含む)

0.08% (1,250人に1人)で、そのうち半数強は7日内に回復し、90%が最終的には回復し  ています。

・慢性的な疼痛や運動障害の要因としては心身の反応が最も考えられています。

・HPVワクチンを接種していない場合でも、HPVワクチンを接種後に生じたとされる症   状と同様の多様な症状を認める場合があります。