子宮頸がんワクチン 9価ワクチンが2023年度より定期接種へ

 子宮頸がんなどを引き起こすHPV(ヒトパピローマウイルス)の9種類の遺伝子型に対応した9価ワクチンが、2023年度早期から定期接種化されます。

子宮頸がんのHPVワクチン、定期接種化へ 2023年度早期から(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

 現在、子宮頸がんワクチンは2価と4価が承認されておりますが、9価はどのような違いがあるのでしょうか

 

まずは、子宮頸がんの原因となるHPVの遺伝子型について整理していきたいと思います

ヒトパピローマウイルスについて】

ヒトパピローマウイルス(HPV)には、200種類以上の病原性がありますが、がんを引き起こす可能性のあるウイルスはごく一部です。

高リスク型:子宮頸がんの原因です。HPV16型, HPV18型が中心

       その他、31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 59, 66, 68型などがあります。

低リスク型尖圭コンジローマの原因です。HPV6型, HPV11型があります。

 尖圭コンジローマとは

 

高リスク型の中でも、特HPV16, 18が重要です。

1.子宮頸部病変の強さとの関係

病変が強いほど、HPV16, HPV18の陽性率が高くなっています。

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Iwasaka T, et al.Int J Gynecol Obst, 62:269-277,1998より引用し改変

2)子宮頚がんにおける年代別HPV16/18

40歳未満では、HPV16/18陽性率が極めて高くなります。

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横山正俊. 子宮頸がん, 臨床と研究 2019; 96 (2); 71-76 より引用し改変

【ワクチンについて】

現在、わが国で定期接種となっているのは以下の2種類です。

サーバリックスR (2価):HPV16, HPV18 (高リスクHPV) をカバー 

ガーダシルR (4価):HPV16, HPV18に加えて、HPV6, HPV11(低リスク) をカバー

対象は、12歳になる年度初日~ 16歳になる年度末日までの女児です。

これで約70%のHPV感染が予防可能となります。

計3回の接種が必要で、スケジュールは、

サーバリックス:2回目が初回より1カ月後、3回目は初回より6カ月後

ガーダシル:2回目は初回より、2か月後、3回目は初回より6カ月後

となります。

当院では、ガーダシルを採用しています

 

9価ワクチンである、シルガードRは、ガーダシルR に含まれる(HPV16/18/6/11)に加えて、高リスク型の31/33/45/52/58を含みます。これにより約90%のHPV感染が可能となります。

現時点で、接種回数は3回 (海外では2回の国もある)で、接種対象年齢は現行と変更なしを予定しているようです。2価, 4価ワクチンを(途中まで)接種している方への接種はこれから議論されるところです。

 

これから想定される質問は、「9価ワクチンが出るまで待った方が良いでしょうか?」です。回答は難しいですね・・・。あくまでも私見ですが、HPVは性交渉により感染するので、9価ワクチンの定期接種化までに性交のある可能性がある場合は、待たずに4価ワクチンを接種した方が良いかと思います。

 

スウェーデンの研究では、4価ワクチンでも早期に接種すれば効果は十分です。17歳より前に接種すると約90%発症を予防できました。

良かったら私の過去ブログをご参照ください。

 

teammanabe.hatenablog.com

 

最後に一言、ワクチンは100%を予防できないので、検診も必要です。

 

まだ、情報が入ったら、随時更新していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。