国内の子宮頸がんの現状について

当院では、この4月より、子宮頸がんワクチンの接種を再開することにしました。子宮頸がんワクチンは接種後に持続的な疼痛と運動障害などの有害事象の報告が繰り返し報道されたことより、厚労省は定期接種化されてわずか2か月後に本ワクチンの積極的な勧奨を中止していました。当院ではこれまで慎重に動向を見守り、国が積極的に勧奨するまでは待つつもりでした。しかし、2016年7月にHPVワクチンの被害を訴える方が国と製薬企業を相手に訴訟を起こしており、この訴訟はどちらが勝訴するにしても最高裁まで行くことは確実で、結審するまでは接種勧奨の再開ができないと言われており、このままでは何年かかるかわかりません。そこで、個々の対象となる女児・保護者の方に、子宮頸がんワクチンを接種することによる子宮頸がんの予防効果と接種後の副反応(一部はワクチンの接種と因果関係はないが、きっかけにはなっている)について説明し、理解していただいたうえで選択していただくことを考えました。しかし、4/25現在、子宮頸がんワクチン接種の申し込みはいまだに「ゼロ」です。そこで今回子宮頸がんワクチンについてブログで取り上げていくことにしました。

 

今日は国内の子宮頸がんの現状についてお話ししたいと思います。

・1年間に約10,000人の女性が発症し、3,000人が死亡

先進国では、子宮頸がんの死亡率は減少傾向だが、唯一日本だけが上昇傾向

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・子宮頚がんの若年化は進んでいる。

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1985年は50歳代がピークだったのに対し、2008年は25~44歳にピークがある

・出産年齢は高齢化がすすみ、現在最も出産が多いのは30歳代前半であり、出産のピークと子宮頸がん発症のピークが重なっている

・全国のがん診療拠点病院計510施設を対象とした調査によると、妊娠に合併した悪性腫瘍157例のうち、子宮頸がんが56例 (36%)を占め、ダントツの1位であった。

マザーキラーと言われており、若年女性への対策が緊急の課題である。

(Kobayashi Y, et al. A Japanese survey of malignant disease in pregnancy. Int J Clin Oncol 

2019 Mar;24(3):328-333.)