前回、おちんちんの皮は、思春期になる頃には自然にむけるようになるので、基本的に治療は必要ないことをお話しました。
前回の記事は↓
では、治療を要するのはどのような場合でしょうか?
1) 亀頭包皮炎を繰り返す場合
陰茎先端が赤くなったり痛くなったり、場合により膿をみとめます。包茎に伴い、包皮が汚染することによります。再発する場合には治療を検討します。
2) 持続的バルーニングをみとめる場合
排尿時に陰茎が風船上に膨らむ状態です (排尿初期だけであれば問題なし)
3) 嵌頓包茎の既往
包皮を無理にむいた後戻らなくなった状態。放置すると重大な合併症を起こす危険
があります。整復が必要です。用手的に整復できたとしても、裂傷があり、その治癒過程で瘢痕狭小化を来たし、治療が必要になることがあります。
(4) 乳児期に尿路感染症を繰り返す場合
包皮先端に便が付着し、包皮口から細菌が侵入することによります。
治療としては、保存的治療と手術治療に分かれます。
保存的治療は、ステロイド軟膏の塗布になります。
リンデロンVRやキンダベードRなどを、痛がらない程度に包皮をひっぱり、内側にすりこむように塗布します。1日2回、約1~2ヶ月間継続して塗布します。
ステロイドの作用機序としては、1) 皮膚をうすくすることで進展をよくする, 2)抗炎症作用により癒着の剥離を促す 3)湿潤作用、が考えられています。
4~8週継続で80~90%以上の治療効果が期待できるとされています。
治療終了後に約10%に再発をみとめたが、ステロイド軟膏治療の再開で軽快したという報告もあります (住友健三, 他.小児科臨床64:1158-1163, 2011)
局所的な治療なので安全性についても問題ないと考えられます。
なお、以前は、用手的包皮拡張法 (家庭で入浴時などに包皮を指で陰茎根部方向にゆっくりひっぱり、毎日少しずつめくるように翻転する。その後、必ず元に戻す)が行われてきました。数週~数ヶ月で有効率は50%程度ありますが、指導方法を誤ると包皮の出血や亀裂を生じ、包皮の瘢痕化や嵌頓包茎を引き起こすリスクはあります、最近では、
行うべきでないとされつつあります。
手術療法は、亀頭包皮炎の反復や嵌頓包茎により、包皮が裂傷を起こし、その後瘢痕により狭小化を起こした場合に検討されます。それ以外の理由では、全身麻酔が必要, 外観からいじめやからかいにあう可能性がある、合併症のリスク '(0.2~5%に出血や感染)より推奨されません。
以上、簡単ではありますが、包茎について解説させていただきました。
お子様のおちんちんの様子が気になる方はまずは外来でご相談ください。
参考資料:
1.川合 志奈, 他.【小児外科 ディベート対決(日常よくみる疾患)】包茎 保存的治療
川合 志奈, 小児外科49巻2号 Page224-228,2017
2.力石 辰也, 他.小児外科 ディベート対決(日常よくみる疾患)】包茎 手術療法
, 小児外科49巻2号, 221-223,2017