今日は、4種混合ワクチン (破傷風, ジフテリア, 百日咳, 不活化ポリオ) に含まれるジフテリアについて解説いたします。日本では20年以上報告がなく、私自身も経験したことがありません。でも、海外では報告があり、輸入感染症として持ち込まれる可能性があることと、発症すると重症化するため、接種は必須です。
✎ジフテリアとは
ジフテリア菌 Corynebacterium diphtheriae が気道感染し、2~6日間の潜伏期を経て、鼻・咽頭・口頭などの気道粘膜に偽膜を形成することで起こります。喉頭ジフテリアになると、嗄声や犬咳嗽咳嗽などクループ症状を呈し、真性クループとよばれます。(小児科外来でよく遭遇するウイルス感染症によるクループは仮性クループとよばれます)偽膜が気管支まで伸展すると気道閉塞をきたします。
さらに、ジフテリアの産生する毒素が、心筋細胞や神経系の細胞を傷害し、心筋炎や神経障害をきたし、致死的となることがあります。
✎感染経路は?
人が唯一の自然宿主であり、飛沫または接触感染します。ワクチン未接種者が感染しても発症するのは10%程度であり、無菌症候性保菌者が感染拡大の要因となっています。
感染症法では二類感染症に含まれ、患者および無症候性保菌者は届け出の対象となります (新型コロナの初期と同様ですね)
✎国内での発生状況
・戦後の1945年には約86,000人が感染し、その約10%が死亡
・1948人に予防接種法が制定され、ジフテリアトキソイドの定期接種が開始
・1991~2000人には21人, 2000年以降は報告なし
✎ワクチンについて💉
0~1歳時に、4種混ワクチンとして計4回接種します。
小学校6年生の時に2種混合ワクチン (破傷風・ジフテリア)として追加接種します。
しかし、2種混合ワクチンの接種率は70%前後と低くなっております。
✎海外での発生状況
・2017年にバングラディシュでミャンマーからの避難民700人以上の症例が報告
・フィリピンではスラムからジフテリアのクラスターがしばしば報告されている
・その他、インド, インドネシア, ベネズエラ, ネパール, パキスタンなどで流行が
みられている
✎番外編 ジフテリアの親戚がペットより感染
ジフテリア菌の類縁種である、コリネバクテリウム・ウルセランス Corynebacteriumu ulcerans はジフテリアに似た症状を示す、人獣共通感染症で、日本では2001年より20例が報告されている。予防にはジフテリアトキソイドの接種が有効です。
✎まとめ
ジフテリアはまれですが、今後、海外より持ち込まれる可能性があります。実際に欧米ではこうした事例が報告されています。小6の2種混合ワクチンは忘れないよう接種しましょう。
参考文献
1.水野 真介, 感染症から子どもを守るために-新型コロナウイルス感染症からの学びとワクチンの最新情報-】感染症と免疫・ワクチン ワクチン各論 ジフテリア, 小児科臨床. 2020.73:1750-1754.
2.遠田 耕平, 【TVF】忘却の感染症とワクチン ジフテリアと日本脳炎を中心に、ワクチン由来変異株ポリオ、麻疹、風疹、CRSなど, バムサジャーナル. 2021.33:14-19.