お子様のほめ方 【ほめ方の実際】

さて、お子様のほめポイントをたくさん見つけてあげることができたでしょうか。

今日は、ほめ方のコツを伝授します

 

技1) にこやかに、お子様を見ながら、穏やかな口調でほめる

お子様と目があった状態でほめてないと、自分がほめられていることに気づかない場合があります。また、お子様が、自分がほめられていることをわかっているかどうかを表情や動作から推測することも大事です。例えば、上手に描いた絵を、「きれいな絵だね」とほめても、自分ではなく絵がほめられていると誤解してしまう子もいます。

技2) すぐにほめる

  時間がたってからよりも、すぐにほめた方がより伝わりやすいです。例えば、あなたが料理を普段よりも手をかけて作った時に、家族から食卓で「おいしい~」とすぐに言われた方が、翌日「そういえば昨日の料理おいしかったね」と言われるよりも嬉しいですよね。また、時間がたつと「何のことだっけ?」となってしまうことがあります。

 技3)  短い言葉でわかりやすくほめる

○ ありがとう、助かったよ

○ きれいになったね

△ すごいね (それだけでは伝わりにくいこともあります)

× いつもは言わないとやらないのに、今日は自分からやってえらいね 

技4)  ほめ言葉に困ったらお子様の行動を言葉にする (実況中継する)

行動を言葉にするだけでも、あなたの「認めているよ」「注目しているよ」という

気持ちが伝わります。ただし、使いすぎると効果が落ちるのでサブ的に使いましょう

 例. お片付けしているね/宿題しているね

 技5)  子どもが頑張れるキーワードを探そう

~名人、~チャンピオン、のようなほめ方も効果あります。今は鬼滅の刃の人気がすごいので、炭治郎みたいだねで喜ぶ子が多いかもしれません。

例. 片付け名人だね/自分で着替えて大人だね!

 技6)  他の人にも報告する 

お父さんや祖父母にもお子様に聞こえるように報告してあげてください。うれしさ倍増です

 

注意!  💣逆効果になりやすいほめ方💣

 1) 比較が混じる

例.さすがお姉さん!/お兄ちゃんは違うね

 行動が本人の希望と異なる場合 (無理をして姉/兄として行動している)は、「お母さんは分かっていない」と あなたに不信感を持ってしまうこともあります

 2) 皮肉だと受け取られる可能性がある

例.がんばればできるじゃない/いつもこうだといいけどね

「いつもは頑張っていない」という意味に思ってしまうことがあります

 3) お子様にとってできていて当たり前のことをほめられたとき

バカにするなと思われてしまうことがあります

 

ほめ方についても、遠慮なくご相談くださいね。

 

お子様をほめるコツ 【全ての子に使えるほめポイントの見つけ方】

発達支援外来では、まずは保護者の方に、怒らずにほめることから始めましょう、と説明します。しかし、ほめるのが難しい、ほめる部分がない、など厳しい発言が保護者の方から出てくることも少なくありません。今回は、ほめポイントの見つけ方について解説させていただきます。

コツは、

①できなくても努力している事をほめる

② できている時を逃さずにほめる

③ 行動を細かく分ける (スモールステップ化)する

④ さりげなく手伝いできたらほめる などです。

(基本的に③と④は合わせ技で使います)

 

以下、解説

①できなくても努力している事をほめるについて

【例】小学校1年生のS君が、「宿題するのが面倒だなあ」と言いながら、机に向かいました。宿題を始めたものの集中できていないようです。

(解説) これまでなら、「宿題をきちんとやりなさい」と怒っていたでしょう。しかし、下線を引いた箇所が「ほめポイント」です。宿題するのが面倒だなあと言っていたのがは、宿題があるのを覚えていた証拠です。自ら机に向かったこと、宿題を始めたことも大きなほめポイントです。

② できている時を逃さずにほめるについて

【例1】いつもはリビングから出ていくときにドアを開けっ放しの子が閉めた 

【例2】妹を泣かせてしまうことの多いお兄さんが、妹と仲良く遊べていた

(解説)普段できないことができている場合は、逃さずにほめてあげましょう。できている時にほめてもらえずに、出来ていない時は怒られるのは、お子様の立場からすると不条理ですよね。なお、100%できている事はほめる必要はありません。かえって、馬鹿にしているの?と思われてしまいます。

③ 行動を細かく分ける (スモールステップ化)する

【例1】学校に行く準備を、着替え, 食事, 歯磨き, などの行程に分解する。

【例2】洋服を着るを動作を、1)イスに座る、2) 洋服の両端を持つ 3) 頭のうえにかぶる

4)左手を通す 5) 右手を通すなどと分解する 

(解説)スモールステップ化は、お父様も仕事をするにあたり使っているスキルではないかと思います。例えば、あるプロジェクトを企画する時に、いきなりとりかかるのではなく、やるべきことを細かく分解していきますよね (TO DO リストを作りますよね)

これと同じことです。できている部分をみつけてほめてあげましょう。

④ さりげなく手伝いできたらほめる などです。

【例1】プラモデルを作っていたが、ある個所でつまずいていた。その時に、

「この部品はどこに入れるんだろうね~」とさりげなくヒントを出した。それにより、つまずきが解決し、その後は難なく完成した。

【例2】洋服を着るを動作を、1)イスに座る、2) 洋服の両端を持つ 3) 頭のうえにかぶる

4)左手を通す 5) 右手を通すなどと分解する。1)~4) をほぼ手伝いながらも着替えることができた。

(解説) 例1の場合、完成した時に、「手伝ったからね~」など余分なことは言わず、ヨイショしてほめることが大事です。あくまでも自分の力でできたように思わせることが大事です。後は、つまずいているところで、「ここは私がやるは」と言わず、さりげなくヒントを出すことが大事です。お母様がやってしまうと、プライドが高く失敗に弱い自閉スペクトラム症の子は、「どうせ自分はだめなのだ」と自己肯定感が下がり、イライラしてしまいます。繰り返しになりますが、自分の力でできたように思わせることが大事です。このようなさりげない手伝いを、プロンプトと言います。例2では、最初は保護者の方がフルにプロンプトをして、洋服を着たらほめます。日常生活動作のプロンプトには、①身体プロンプト (一緒に身体を動かして手伝う)②視覚プロンプト (指差しや絵カードなどでヒント)③言語プロンプト (例.右手入れて~)があります。強さは、身体プリンプト>視覚プロンプト>言語ポロンプトです。最初は身体プロンプト主体で、徐々に視覚プロンプトや言語プロンプトへ補助レベルを落としていき、採取的には自立を目指します。なお、自立は最後の動作(この例では右手を通す)から目指していきます。理由は、できたという達成感を味わいやすいからです。

 

以上、ほめポイントの見つけ方について解説させていただきました。でも、実際はそう簡単には行かないこともあると思いまし、ほめるのが得意でない保護者の方もいらっしゃるかと思います。こういう時は、遠慮なくご相談ください。一緒に考えていきましょう。

 

 

 

就学前・就学後の3種混合ワクチンについて

昨日はいい天気でしたね。大きな公園にピクニックに行ってきました。早桜が咲いていて綺麗でした。スギ花粉も明らかに飛んでますね。

夕方は座間市急患所の当番へ。比較的平和だったおかげで、療育関係のブログ記事を書くことができました。明日以降お楽しみにしてください。

さて、今日は学童期の3種混合ワクチン (任意)の必要性について解説致します。

 

 2018年8月に、学童期以降の百日咳とポリオに対する免疫を維持するために、就学前の3種混合(百日咳, ジフテリア, 破傷風)と不活化ポリオワクチンの接種が、日本小児科学会より推奨されました。

 

 百日咳とは、百日咳菌の産生する毒素により、咳が長く続き、発作性の咳き込みにより睡眠障害や嘔吐をみとめる病気です。特に、生後6ヶ月未満の児に重症化のリスクが高く、約25%に無呼吸発作をみとめ1)ます。そのため、入院加療を要することが少なくなく、死に至る場合もあります。また、児童・生徒でも、強い咳嗽により、長期間の欠席を要した例や両眼の眼球結膜出血を呈した例も経験されています2)。

(両眼の出血を呈した症例は、私が、2008年に論文発表し、小学校入学前の追加接種についても言及しています)

 

百日咳は0~1歳時に計4回の4種混合ワクチン (3種混合+不活化ポリオ) 接種により予防しますが、ワクチンにより得られた免疫が数年後には減弱することが明らかになっております3)。実際に2018年に報告された百日咳は5~15歳未満が最も多く全体の64%を占め、さらにそのうちの80%が4種混合ワクチンをスケジュール通り4回接種しているにもかかわらず感染しておりました1)また、重症化するリスクの高い生後6ヶ月未満の症例の42% (感染経路不明を除くと60%) がきょうだいからの感染であり1)、最初に、ワクチンの効果の減弱した学齢期の児が感染し、その後、ワクチンによる免疫の獲得が終了していない乳児に感染することが明らかになりました。そこで、重症化しやすい生後6ヶ月未満児への感染を予防する目的で、日本でも諸外国と同様に、就学前に3種混合ワクチンの追加接種が任意接種として推奨されるようになりました。なお、小学校入学後の接種や小学校6年時の2種混合ワクチン (ジフテリア, 破傷風)を3種混合ワクチンに変更して (ただし任意) 接種することも可能です。さらには、妊婦や妊婦の家族への接種も審議中であり、今後の動向が注目されます。

 

参考文献

1.国立感染症研究所. 2018年第1週から第52週までにNESID に報告された百日咳患者のまとめ.https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/pertussis/pertussis-190327.pdf

2.真部哲治, 他. 両眼出血を呈した百日咳の1例. 日本小児科学会誌2008; 112 (6); 1002-4.

3.岡田賢司. 沈降精製百日咳ジフテリア破傷風不活化ポリオ(セービン株)混合ワクチン(DTaP-sIPV) 接種後の抗体価推移と追加接種の必要性に関する研究.

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000145363.pdf

キズパワーパッドの添付文書の謎

先日、生後6か月の頬の傷を主訴に受診した方がいました。キズパワーパッドの使用をすすめたところ、お母様より、添付文書に3歳未満は使用できないと書いてあった、という指摘をいただきました。おそらく、3歳未満では安全性が検証されていないからでしょうと説明し、メリットを説明したうえで使用をすすめました。

 

ケガをするリスクの高い3歳未満に使用できないとなると診療に大きな影響が出るため、キズの治療の第一人者である、夏井睦先生に確認しました。

医師の紹介|なついキズとやけどのクリニック 江東区門前仲町駅近くの形成外科,皮膚科 (natsui-clinic.jp)

 

結論は、「乳児に使用しても問題なし。ただし、連日貼り続けると皮膚トラブルを起こす危険があるので毎日交換しましょう」でした。

 

・年齢制限について

キズパワーパッドが商品化された際の、アドバイザーの医師の専門は「褥瘡」であ

り、乳幼児の外傷の経験がおそらく少なく、3歳の線引きは何となくで、決まったよう

です。

 

5日間貼り続けることについて

「褥瘡患者は1週間貼り続けても安全だから」ということで決まったようです。褥瘡患者は自力で動かないし汗もあまりかかないので1週間張りっぱなしでも皮膚トラブルは起きませんが,元気いっぱいに汗をかきながら一日中走り回っている乳幼児患者では全く違います。特に夏場は貼り続けると、「あせも」や「とびひ」を起こす危険があるので、毎日の交換をおすすめします。

 

繰り返しになりますが、

キズパワーパッド3歳未満でも使用可。ただし、特に夏場は毎日はりかえましょう

新しいアレルギー検査導入します【痛みが少ない・20分で結果が分かる】

スギ花粉の飛散期になると、お子様のアレルギー検査を希望しているが抵抗がある、あるいはお子様の拒絶が激しく検査出来ない、という方が少なくありません。

そこで、イムノキャップラピッドという検査キットを導入しました。

サーモフィッシャーダイアグノスティックス : イムノキャップ ラピッド 鼻炎・ぜんそくⅠ™ ポックWEB | POC検査情報提供サイト

ランセットという器具を指に当て(針は見えません微量の血液を採取して行います。

www.thermofisher.com

測定項目は、ネコ・ダニ・カモガヤ (イネ科。初夏と秋に飛散)・ブタクサ(秋に飛散)・ヨモギ(秋に飛散)・イヌ・ゴキブリ・スギの8項目です。

結果は下図のように約20分で判明します。

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ひかって見にくいところは「強陽性」です

検査の正確性も問題ありません

感度イムノキャップラピッド陽性/従来のアレルギー検査で陽性は高く、イヌ, ネコ, スギ, ヨモギ. カモガヤが100%, ダニ96.8%, ブタクサ96.3%, ゴキブリ81.5%でした。

(少しゴキブリは低いですが許容範囲かと思います)

 

欠点としては、あくまでも定性検査であり、反応しているor 反応していないしか、わからない点です。従来のアレルギー検査 (定量検査)のように数値では出ません。肘からの採血に抵抗のない方は従来の検査の方がおすすめです。また、上記8項目しか検査できないのも弱点になりえます。

 

両者の比較は、以下

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アレルギー性鼻炎があり、原因を知りたい。でも、採血は怖いな~という方気軽にご相談ください。

 

 

新型コロナウイルスのmRNAワクチンについてのわかりやすいサイト

最近、新聞で新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンについての記事を目にする機会が多くなりました。

ポジティブな情報とネガティブな情報が錯綜していて、何を参考にすればよいのかわからなくなっている方も少なくないのではないかと思います。

一昨日、他院の先生より、「こびナビ」というわかりやすいサイトを教えていただきました。

「こびナビ」は小児科, 感染症, 疫学など色々な分野の先生方が数日前に立ち上げた、新型コロナウイルス感染症新型コロナウイルスワクチンに関する正確な情報を皆さんにお届けするプロジェクトです。

covnavi.jp

一般向けと医療従事者向けで解説が分かれており、一般の方にもわかりやすい内容となっております。絶対に接種しましょう!などとは記載されておらず、論文を根拠に、有効性・安全性が理論的にかつ分かりやすく解説されております。

 

本当は自分で解説を作成したかったのですが、悔しいですが、これ以上のものは作れないと思い、紹介させていただきました。

ぜひご覧になり、mRNAを接種するかどうかの判断の一助としていただけると幸いです。

 

 

 

スギ花粉症について

今回は、毎年多くの人を悩ます、スギ花粉症について解説させていただきます。

スギ花粉症は増加傾向で、耳鼻咽喉科医を対象とした調査によると、1998年から2008年の10年間で、5~9歳で7.2%から13.7%, 10~19歳で16.7%から31.1%に変化しています1)。増加の原因としては、戦後に植林されたスギにより産生される花粉量の増加や大気汚染などが考えられています。

花粉症の症状は、くしゃみ, 鼻汁, 鼻閉 (鼻づまり) が3大症状です。掻痒感により、鼻をこすり、鼻出血をきたすことがあります。また、鼻閉のため口呼吸となり、日中の口渇感や夜間のいびき・睡眠不足の原因となります。その他、花粉の付着した場所によって、眼のかゆみ, 喉のかゆみ, 咳嗽, 皮膚のかゆみなどをみとめることがあります。これらの症状が強いと学習への影響が心配されます。実際に海外で花粉症の症状がテストの点数に影響したという報告2)もあり、症状の程度に応じた対応をする必要があります。 

 小児科的な治療としては、生活指導, 薬物療法, 免疫療法があげられます。生活指導では、抗原 (スギ花粉) の回避が重要です。具体的には、スギ花粉の飛散量の多い日は外出を避ける, 外出時にはマスクやメガネを着用する, 洗濯物や布団を外に干さないなどです。

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(鳥居より提供)

薬物療法としては、内服薬としては2世代の抗ヒスタミン(アレジオンR, アレグラR, アレロックR, クラリチンR, ザイザルR, デザレックスRなど) とロイコトリエン受容体拮抗薬 (オノンR, シングレアR, キプレスR) が中心となります。2世代の抗ヒスタミン薬は、くしゃみ, 鼻汁, ロイコトリエン受容体拮抗薬は鼻閉に効果があります2世代抗ヒスタミン薬は中枢への移行が少なく、眠気や作業効率の低下を起こしにくいとされています。点鼻薬としては、鼻噴霧用ステロイド (アラミストR, ナゾネックスR, 小児用フルナーゼR) が中心となります。強力な抗炎症作用により、鼻炎の症状を速やかに改善させます。さらに、いずれの薬剤も血中への移行は1%以下と低く安全に使用できます。点鼻用血管収縮薬 (プリビナRなど) は鼻閉を改善させますが、連用による薬物性鼻炎や過量投与による発汗, 徐脈や昏睡など副作用の危険があるため1週間以下の使用にすべきです。

薬物療法が症状を抑えるための治療 (悪い言い方をすればその場をしのぐ治療) であるに対して、免疫療法は治癒を期待できる治療法で、皮下注射と舌下投与の2つの方法があります。皮下注射法は以前より行われていましたが、頻回の通院 (初期は週1回, その後は月1回)を要し、疼痛や頻度はまれですが重篤アナフィラキシーのリスクがあることより、実施できる施設は限られていました。それに対して、2014年よりアレルゲンを含む製剤を舌の下に保持して飲み込む、舌下免疫療法が一般診療として開始されました(5歳以上から実施可能です)。この方法は疼痛がなく、副作用も口腔内や耳のかゆみなど軽微であり、自宅で実施できるという利点があります。ただし、毎日の投与が必要で、服薬忘れがないよう自己管理が必要です。皮下・舌下いずれの治療も少なくとも3年間 (できれば4年以上)は根気強く続ける必要があります。)当院で行っているのは舌下免疫療法のみです。 

 小児の場合、症状があっても自覚していない場合や訴えずに我慢していることがしばしばあります。鼻症状がひどく、口呼吸や眠そうにしている児がいたら、学習への影響が出る前に、医療機関の受診をご検討ください。

 

参考文献

1.中江公裕, 他. アレルギー性鼻炎の全国調査-1998年と2008年調査との比較. Prog Med 009; 29: 283-9.

2.Walker S, et al. Seasonal allergic rhinitis is associated with a detrimental effect on examination performance in United Kingdom teenagers: case-control study. J Allergy Clin Immunol 2007; 120: 381-7.