日本児童青年精神医学会参加記3.ADOS2について

11/20まで、Webで日本児童青年精神医学会が配信されていました。その中で学んだことを、記事にします。記事というか完全に私自身のメモですね・・・。

 

内容は、ADOS2 (Autism Diagnostic Observation Schedule Second Edition)という、遊びや何気ない会話の中で、意思伝達、相互的対人関係、遊び/想像力、限定的・反復的行動など、自閉スペクトラム症 (ASD)の特徴を評価する手法についてです。

演者は甲子園こども相談室の廣瀬公人先生でした。

検査時の映像を拝見しました。検査時間は40~60分。遊びながら子どもの様子を観察します。検査者は、型ハメをわざとブロックしてそれに対する反応をみたり、別の方向のオモチャを「あ」と言って、指さして、それに対する反応をみたり、など、どんどん仕掛けていきます。子どもの反応を詳細にとらえ、評価していきます。改めて観察の重要性を認識しました。ビデオ撮影し迷った時はチームでdiscussionするそうです。

検査の解説と同時に先生のASD児への対応の思いも伺いました。

 

以下、箇条書きですみません(私のメモの字が読めず再現しきれておりません😅)

・この子はどんな世界を見ているのか、それはどんなしかけになっているのか異文化として捉える。異文化コミュニケーションの気持ちで。「当たり前は通用しない」

例.アメリカでは土足。靴をぬいだら無礼。

・子の行動に対し、仮説をたて、検証する(やってみる)

・構造化:余分な情報は排除。骨組みの重要な情報のみ

・目に見えない情報の明示化も大事

・ABA (応用行動分析)を2人の先生より受けている児がいた。

1人は「厳しい先生」もう1人は「優しい先生」と児は言う。

ドアをあける課題の時

前者は、成功したら、ほめる+強化子(ほうび)で終了

後者は、ドアを開けたその先を一緒に歩いてくれた

行動観察, かかわりながらの観察→日々の生活介入に結び付く

 自閉症を持つ児がいきいきと暮らせるために

 

(コメント)

診察室よりも子どもの本来の様子を観察できるし、今後の支援に役立てる評価が出来そうと思いました。また、この検査を繰り返すうちに、支援者の観察レベルもあがりそうです。しかし、この検査ができるようになるためには、土日を丸々2日間講習を受けないといけません。時間的に厳しいかな・・・。また、クリニックだとスペースが厳しいなぁ。それに対しては、子どもの在籍している園の中で、検査ができないかな、それなら保育士の先生方にもその場でフィードバックできるし・・・と勝手に妄想してしまいました。

 

 

 

 

 

体罰でなくてもトラウマになります

最近、対応した患者さんの事例を紹介します。記事にするにあたり、本人・保護者の同意のうえ、個人が特定されぬよう、配慮しております。

【症例】小学校高学年の男児。担任の先生より、授業中に発言しようと手を挙げても無視される (同級生も分かるぐらいあからさま),  忘れ物をした時に保健室で反省文を書かされる (忘れ物をした他児は何もなし)などの対応を日常的にされていた。その後、学校のことを考えるたびに、頭痛, めまい, 嘔気, 不眠など体の不調を訴えるようになった。保護者が、保健室の先生の協力を得て、学校長に相談したところ、担任は謝罪をした(形だけで心はこもっていない)。その後も、その担任はこの児のクラスの担当を続けていた。児は何と通学しようとするものの、教室に入るたびに、体調の不良を訴え通学できなくなった。学校に相談しても、もう謝罪はあったし、終わったことという返答しか得られていない。

 

外来で、私が学校に関する話題をするたびに、苦悶様の表情を浮かべている状態でした。これは担任の対応により、トラウマを受け、心身症状をみとめ不登校となったと考えられます。担任の側にも理由や言い分はあるかもしれません。しかし、この児が、強いストレスにさらされていたのは事実です。

 

殴る,蹴るなどの体罰でなくても、児のトラウマとなることがあります。先日行われた児童精神青年医学会でも、中学生の女児で、小学6年時に、宿題を忘れた事を理由に、放課後残され、にらまれ、罵声を浴びた翌日より、嘔気・嘔吐により不登校となり、その後、不眠 (教師に怒鳴られる夢を見る)や大きな声に対して驚きパニックを繰り返した事例が紹介されていました。

 

繰り返しになりますが、子どもとかかわる職種の方には、体罰でなくても、トラウマになりうることを知っていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

新聞記事より:新型コロナ 妊娠後期の感染 重症化の傾向

遅くなりましたが、10/25の朝日新聞の記事を要約して紹介します。

【妊婦さんと妊娠していない女性の比較】

1.米疾病センター (CDC) からの報告

約9万人の女性を対象とした報告。妊婦はそうでない女性と比較して、入院のリスク

5.4倍, 手中治療室に入るリスク1.5倍, 人工呼吸器を使うリスクが1.7倍高かった

(ただし、妊娠していないとされた女性が妊娠している可能性, 妊婦の症状データの

多くが欠落しているなど限界がある)

2.英国の研究者らが信頼できると評価した77本の報告を分析した検討

妊婦とそうでない人に分けて比較。(a) ICU入室例は、妊婦1.5%に対し、そうでない人は

0.9%、(b) 人工呼吸器使用例は、妊婦0.5%に対し、そうでない人は0.3% 、妊婦の方が重症化リスクが高かった

(ただし、論文により症状の定義が違うまま比較されているという限界がある)

【妊娠時期による重症度の比較】

日本産婦人科医会による調査。1~6月に出産した約30万6000人の妊婦のうち、72人が新型コロナに感染し、発熱などの症状が出たのは58人だった。この58人を、妊娠初期・中期例 (以下、前半群)と後期産後すぐ例 (以下、後半群)で比較した。CTで肺炎像をみとめたのは、前半群10.3%に対して、後半群は52.6%であった。呼吸困難で酸素投与を要した割合は、前半群7.7%に対して、後半群35.8%であった。妊娠後期になるほど重症化する可能性が示唆された。

 

日本産婦人科感染症学会副理事の日本大学の早川智教授によると、いずれの報告も限界点があり、結果は完全ではなく、リスクは否定できないが、まだ明確に重症化しやすいと示している報告はない。もともと妊娠後期は、子宮が大きくなると横隔膜が上がって呼吸しづらくなり、咳や息苦しさが悪化しやすいという特徴がある (喘息やインフルエンザの重症化リスクがありますね)症状の悪化は新型コロナウイルスによるものではなく、妊娠後期の妊婦の特徴を見ている可能性がある、早川教授は、「国内では感染しても適切に対応できる態勢がある。過度に恐れず、基本の感染予防策を続けてほしい」と話している。 (以上新聞記事より)

 

当院ではもともと妊婦さんには配慮して対応しておりますが、妊娠後期の方への配慮について改めてスタッフ間で検討したいと思います。

イベント情報~〇(まる)のつどい

この時期は勉強会が多いですね、

私は、現在、日本児童青年精神医学会, 日本小児アレルギー学会, 日本小児感染所学会の3つをWebで視聴しつつ、発達障害関連の講演も視聴しております。

昨日も約5時間、日本児童青年精神医学会を視聴しました。

特にゲーム依存症のシンポジウムがとても面白かったので、近日中に紹介しますね。

 

今日はイベント「〇のつどい」を紹介します。

四国や九州のイベントなのですが、今年はオンライン開催なので、どこからでも参加できます。

クリニックにも掲示しておきますので、ご興味のある方はご参加ください。

 

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karilab.jp

 

就学前不活化ポリオワクチン接種

不活化ポリオワクチン就学前接種公費助成自治体が徐々に増加しているようです。

下の図は2020年9月時点の公費助成実施自治体です。

知っている地名が埼玉県の鴻巣しかありませんでした m(__)m

なお、当院の診療エリアではまだこうした動きはありません。

小児科医が連携してアピールしていかないといけないかな。

行政も今は財政が厳しいからコロナが落ち着いた後に・・・。

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 ポリオワクチンについては前の記事をご参照ください。

teammanabe.hatenablog.com

 

 

小柴昌俊さん

素粒子ニュートリノ観測で2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊 さんが11月12日夜に老衰で死去しました。94歳でした

 

小柴さんは、若いころには幾度も逆風を浴びている。旧制中学時代に小児麻痺にかかり、軍人や音楽家への夢は絶たれた。その後、担任から渡されたアインシュタインの本をきっかけに物理学の道を志すが、受験は失敗続き。東大の物理学科に入学後は、家庭教師や米軍の仕事をしながら家計を支えた。卒業時の成績はビリだったという。

面白いエピソードも紹介されている。中学で教鞭を取っていた時に、「この世に摩擦がなくなったらどういうものか記せ」という試験問題を出している。答えはなんと「白紙答案」。摩擦がなければ紙はすべって紙に字が書けないからである・・・。

また、2002年のノーベル賞受賞後は、こども向けの講演も多くこなしており「教科書を疑い、究明の卵をいつも心に持って」「達成したいと思う卵をどう孵化させるか考えて」と話していたという。(以上14日の朝日新聞の記事と天声人語より)

 

小柴さんが小学生に講演した内容は同感です。医学の世界でも、今は胃癌はヘリコバクター・ピロリという細菌が原因であることは当たり前ですが、数十年前にその考えを提唱した先生は、「なに馬鹿なことを言っているんだ」と周囲からは叩かれたようです。

身近なところでは、食物アレルギーも、今では「症状の出ない範囲で食べさせながら治す」が当たり前ですが、私が医師になった2003年は、血液検査で数値の高い症例は除去が主流でした。私は、すでにおじさんですが、小柴さんのような目で常に新鮮な気持ちで日々の診療にあたっていきたいと思っております。

相鉄線大和駅にホームドア設置

相鉄線大和駅のホームにも2021年3月までにホームドアが設置されるようです。

駅のホームに転落し、亡くなる視覚障碍者の方が、毎年複数名いらっしゃいます。

点字ブロックが、線路の近くにあるからです。

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www.nhk.or.jp

 

早く全国の駅に設置されるといいな。