体罰でなくてもトラウマになります

最近、対応した患者さんの事例を紹介します。記事にするにあたり、本人・保護者の同意のうえ、個人が特定されぬよう、配慮しております。

【症例】小学校高学年の男児。担任の先生より、授業中に発言しようと手を挙げても無視される (同級生も分かるぐらいあからさま),  忘れ物をした時に保健室で反省文を書かされる (忘れ物をした他児は何もなし)などの対応を日常的にされていた。その後、学校のことを考えるたびに、頭痛, めまい, 嘔気, 不眠など体の不調を訴えるようになった。保護者が、保健室の先生の協力を得て、学校長に相談したところ、担任は謝罪をした(形だけで心はこもっていない)。その後も、その担任はこの児のクラスの担当を続けていた。児は何と通学しようとするものの、教室に入るたびに、体調の不良を訴え通学できなくなった。学校に相談しても、もう謝罪はあったし、終わったことという返答しか得られていない。

 

外来で、私が学校に関する話題をするたびに、苦悶様の表情を浮かべている状態でした。これは担任の対応により、トラウマを受け、心身症状をみとめ不登校となったと考えられます。担任の側にも理由や言い分はあるかもしれません。しかし、この児が、強いストレスにさらされていたのは事実です。

 

殴る,蹴るなどの体罰でなくても、児のトラウマとなることがあります。先日行われた児童精神青年医学会でも、中学生の女児で、小学6年時に、宿題を忘れた事を理由に、放課後残され、にらまれ、罵声を浴びた翌日より、嘔気・嘔吐により不登校となり、その後、不眠 (教師に怒鳴られる夢を見る)や大きな声に対して驚きパニックを繰り返した事例が紹介されていました。

 

繰り返しになりますが、子どもとかかわる職種の方には、体罰でなくても、トラウマになりうることを知っていただきたいと思います。