解熱薬は座薬と飲み薬はどちらが効きますか?

外来で解熱薬を処方する場面で、解熱薬は座薬と飲み薬はどちらが効きますか?という質問もよくいただきます。まずは結論ですが、飲み薬と座薬に効果の差はありません。使用しやすい剤型で良いでしょう。

 

小児の解熱薬として一般的な、アセトアミノフェンは、解熱効果は1~2℃, 効果がピークに達するのが3~4時間、効果持続時間が4~6時間とされています。

Does the use of antipyretics in children who have acute infections prolong febrile illness? A systematic review and meta-analysis

 

アセトアミノフェンには、飲み薬 (錠剤, 粉, シロップ), 座薬と様々な剤型があります。

飲み薬は、消化管の粘膜→肝臓→血中→全身と移行しますが、座薬は直腸の粘膜→血中と移行します。では、座薬の方が、肝臓を通過しないため速効性があるのでしょうか?

日本の各種アセトアミノフェン製剤の添付文書によると、血中濃度がピークに達するのは、飲み薬は空腹時投与で20分~1時間座薬は1時間~3時間半とされています。どうやら座薬の方がピークに達するまでに時間が長いようです。なお、飲み薬は食後の服用の方が吸収に時間がかかるようです。

 

しかし、効果は同等のようです。アセトアミノフェンの飲み薬と座薬で比較したメタアナリシス (複数の研究をまとめて解析する方法で、もっともエビデンスレベルが高い)によると、1時間後, 3時間後の体温の低下, 体温の最大低下, 体温が1℃低下するまでの時間に差はなかったという結果でした。

Effectiveness of oral vs rectal acetaminophen: a meta-analysis

 

以上より、解熱薬の剤型は、お子様の状況により使い分けるのが良いと思います。

服薬がとても苦手な場合、ぐったりして薬を飲むという動作すらきつい場合、嘔吐がひどい 場合(飲ませても吐いてしまう) は座薬が第1選択になるでしょう。その一方で、おしりから入れるのを嫌がる場合, 下痢のひどい場合は飲み薬が第1選択になるかと思います。たまに、シロップなら服用できるというお子様もおりますが、シロップ剤は保存性が悪く、症状が改善したら廃棄しなければなりません。

 

参考文献

 1.菅原 鉄矢, 【いまさら聞けない子どもの薬】熱冷ましの効果の実態, チャイルド ヘルス. 2021;24:338-341.

2. 崎山 弘, 【子どもの病気のホームケア】熱がある, チャイルド ヘルス. 2019;22 :12-15.

3.堀向 健太, エビデンスがわかる!小児のギモンQ&A(第1回) 発熱はこわい?, 調剤と情報. 2019.;25:1337-1343.