コロナと手足口病で増加中~熱性けいれんとその対応について

ここ最近、外来でも熱性けいれんをみとめる例が増えている印象があります。1つは新型コロナウイルス感染症に伴う痙攣です。オミクロン株はそれ以前のアルファ株やデルタ株と比較して、熱性けいれんの頻度が高いと報告されています。

20220328_tyukan_hokoku3.pdf (jpeds.or.jp) p.2のL1~L4

成育医療センターからも最近発表されましたね

コロナ、子どものけいれん増加 ワクチン接種で重症なし | 共同通信 (nordot.app)

もう1つは、手足口病です。

原因となるエンテロウイルスは熱制けいれんやウイルス性髄膜炎を起こしやすい事がしられております。

 

今日は、熱性けいれんについて解説させていただきます。

 

1.熱性けいれんとは?

主に、生後6ヶ月から5歳までの乳幼児に起こる、38度以上の発熱に伴う、けいれん発作です。けいれんの原因は明らかではなく、子どもの脳は未熟で急な発熱に対応できないためといわれています。日本人の約7~8%に起こります。

 2.けいれんの起こり方は?

多くは、全身性のけいれんで、左右対称に、手足が突っ張る,がくがく, ピクピクすると表現され、眼は上転あるいは左右どちらかに偏位します。通常は5分以内におさまり、その後は意識がすみやかに回復します。まれに、脱力, 一点凝視や眼球上転のみの場合もあり、注意が必要です。

 

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3.今後もけいれんを起こす可能性はありますか?

 約70%の児は1回だけで終わります。ただし、① 両親いずれかの家族歴, ② 1歳未満での発症, ③ 発熱から短時間 (1時間以内), ④ 発作時体温が39度以下、のいずれかを満たす場合は、再発の確率が上がります。再発する場合の多くは、1年以内です。

 

4.けいれんの再発を予防する方法はありますか?

ダイアップRという抗けいれん作用のある座薬を、発熱時に使用することで、けいれんが起こるのを予防する方法があります。しかし、70%の児は一生に一度のけいれんであり、さらにダイアップには眠気, ふらつきなどの副作用がありますので、通常は初回のけいれん後に、再発予防を考える必要はありませんけいれん発作を繰り返す場合や15分以上の発作の既往のある場合などに考慮します。

 

5.ダイアップの使用方法は?

 ダイアップを発熱時とその8時間後に使用することで、けいれんの起こるリスクの高い、発熱から24時間をカバーできます。それ以降は、発熱が続いていても、ダイアップを追加する必要はありません。注意点として、解熱薬の座薬も使用する場合は、ダイアップを先に使用し、30分以上あけてから解熱薬を使用してください。同時に使用してしまうと、ダイアップの効果が出るのに時間がかかったり、効果が弱くなったりします。

 

6.けいれんが起こってしまったら?

 (1) 初期対応

子どもを安全な場所も寝かせましょう。しめつけるような衣服はゆるめて、嘔吐時に、吐物を気道にすいこまないように顔を横にして寝かせましょう口の中に、指やガーゼなどを入れるのは窒息の原因になり危険です。また、強く叩いてよびかけたり、体をゆすったりすることもさけます。

上記対応をしながら、けいれんの持続時間, 様子 (左右対称か, 目の向きなど), けいれん後の意識の回復具合などを観察してください。

(2) 医療機関への受診

数分で自然に止まり、意識が回復した場合は自家用車で受診をしましょう。5分以上続く場合やけいれん後の意識の回復が悪い(例.ぐったりして反応が乏しい, 起こそうとしても起きない)場合は、救急車を要請しましょう。

(3) けいれん時のダイアップ使用について

 ダイアップは効果が出るのに30分かかり、また眠気などの副作用により、その後の意識状態の判断が難しくなるので、けいれん時にすぐに使用することは適切ではありません。救急搬送を要するほどのけいれんの場合、搬送先の医師の指示のうえ、使用しましょう。

 

7.解熱薬に関するQ&A

Q1.解熱薬により、熱性けいれんは予防できますか?  

A.予防効果はありません。

Q2.解熱薬の使用により、下がった熱が再上昇する際に、けいれんが誘発される可能性

 はありますか?

 A.過去の研究で、解熱剤使用例で熱性けいれんの頻度が高い傾向はありませんでした。

熱でつらそうな時には解熱剤を使用しても構わないと考えられます。

 

8.注意すべき薬剤について

 感冒時に処方されることのある、鎮静性抗ヒスタミン薬(ペリアクチンR, ポララミンR, ケトチフェンRなど)は、けいれん発作の持続時間を長くする影響が示唆されたため、使用は控えた方がよいとされています。

 

9.ワクチンについて

 初回の熱性けいれんの後は、他のけいれんを起こす疾患との鑑別が必要なため、2~3ヶ月の観察後の接種が目安となっております。すでに熱性けいれんの診断が確実な場合は、当日の体調がよければ、全ての予防接種が可能です。