今日は、最近、ニュースなどで取り上げられ、話題になっている百日咳について
お話しします。
下に都内の百日咳の流行状況を示します。
赤線が今年の流行状況で、現在、大流行中というのが一目瞭然です。

1.百日咳とは?
☑ 百日咳菌 の産生する毒素 (pertussis toxin :PT) によって引き起こされる感染症
☑ 無治療だと咳が数週間から3か月程度、咳が持続することがある
☑ 咳は特に乳児で、発作性の咳き込み、吸気性笛声、咳き込み後の嘔吐をみとめる。
発作性の咳き込みは、5~10回以上続く、連続的な咳き込みです。
吸気性笛声は、大きな努力性吸気が狭くなった声門を通過する音です
(動画:Infant girl with whooping cough - YouTube)
症状は、夜間に強く、チアノーゼ、無呼吸、まぶたの腫れもみとめる。
☑ 生後3カ月未満は重症化しやすく、約50%が無呼吸、1%が痙攣、死亡する。
☑ 小学生以上でも、咳嗽により、長期間の学校欠席を要したり、強い症状を認めること がある。(石川真紀子.他:小児感染免疫 32: 215-219.2020.) (真部哲治, 他. 両眼出血を呈した百日咳の1例. 日本小児科学会誌2008; 112 (6); 1002-4.)
☑潜伏期は約7~10日。
☑ 2018年1月1日から全ての医師が全ての診断例の届出を行う5類全数把握対象疾患へと 変更されました。
2.治療について
☑ 治療はマクロライド系抗菌薬 (クラリスR)を使いますが、百日咳の症状は毒素によるものなので、病状改善効果は低い(百日咳菌をたたいても毒素が残る)。
☑ 除菌により、周囲への感染を防げ、治療開始後5~7日間で菌は陰性となる。
☑ しかし、中国で、2011年より、マクロライド耐性百日咳が報告され、2020年には57.5~91.9%を占めている (Koide K, et al. J Glob Antimicrob Resist. 31:263–269, 2022. )
☑ 中国では生後 2 か月以上の小児に対する治療薬として ST 合剤を推奨している。但し、ST合剤は、低出生体重児、新生児、妊婦には禁忌であることには注意が必要
☑ 国内での耐性株も報告されているが、現時点では報告例は限られている。
3.ワクチン
5種混合ワクチンに含まれ、標準接種スケジュールとして、0歳時に3回, 1歳時に1会の計4回接種します (就学前に3種混合ワクチンの追加接種が推奨されておりますが、これは他の記事で解説します)
下記に2019年の国立感染症研究所から報告された、重症化しやすい時期である生後6か月未満のデータを紹介します。

全数報告サーベイランスによる国内の百日咳報告患者の疫学(更新情報) -2019年疫学週第1週~52週-
特に、未接種の赤ちゃんが重症しやすいのがわかるかと思います。
5種混合ワクチンは生後2ヶ月より接種可能ですので、生後2ヶ月を迎えたら速やかに接種しましょう。