【論文紹介】Down症候群のある方の言語,嚥下・口腔機能,言語聴覚療法に関する現状調査

 今日は、ダウン症とSTに関する論文の紹介です。

 

紹介する論文は以下です。

タイトル:Down症候群のある方の言語,嚥下・口腔機能,言語聴覚療法に関する現状調査

著者:濵口 陽 , 近藤 達郎 

 雑誌:日本小児科学会誌 128: 729-735, 2024

 

【目的】我が国のDown症候群(DS)のある方の言語,嚥下・口腔機能,言語聴覚療法(ST)に関する現状を明確にする

【方法】DSのある方およびその保護者を対象にアンケートを実施した.解析可能な104名(成人43名,小児61名)のデータを,成人(19~40歳)と小児(0~18歳)の2群に分けて解析し、結果を比較検討した.

【結果】

・知的障害の程度は小児では重度が約70%, 成人では約90%であった

聴力:93.3%が日常生活に支障のない聴力であった

発語状況について:全体の3.8%が発語なし、「単語程度」が9.6%,「二語文程度」が8.7%,「三語文程度」が12.5%,そして「三語文以上」が26.9%であった.発語の質に関する評価で,嗄声が気になる点を指摘した対象者は全体の1.0%,吃音について気になると感じると答えたのは26.9%であった.「自由記載」では,「不明瞭」または「聞き取りづらい(聞き取りにくい)」という記述が顕著に見られた

嚥下・口腔機能

 78.8%の対象者が現在の嚥下や口腔機能に問題を認識していると回答した.全体の56.7%は食事で丸呑みが多いと回答し,42.3%は時折食物を誤嚥すると答えた.

言語聴覚療法(ST)について

「現在も受けている」と回答した方は全体の19.6%.一方,「以前受けていた」と回答した方は全体の71.6%,STを受けたことがないと答えた方は11.0%

ST開始時の年齢は0歳から4歳が多く,ST終了時の年齢は6歳が多かった

 

終了した例の約2割がSTの再開を希望していた。

文献より引用

【結論】

DSのある方は,成人期においても言語や嚥下・口腔機能に関する課題を持っている.DSのある成人のST実施の継続や再開は,今後の取り組みとして重要である.

 

【感想】

DSのある方は成人期においてもSTの支援が必要であるニーズがあるがSTの数が不足している。成人どころか、就学後にSTによる支援が途切れることが多い。事業所としては、複数のSTを育てつつ、成人期まで支援していきたい。今は、新卒STを育てる取り組みをスーパーバイザーのSTの先生と進めているところです。5年計画で気長に頑張ります。