先日、保育園健診で指しゃぶりに関する質問をいただきました。それをきっかけに、指しゃぶりについて勉強したことを共有させていただきます。
1.年齢毎の指しゃぶりについて
乳児期:吸綴本能に基づく自然な行為で、口の機能発達面での意義も大きい
目と手の協調運動の学習や様々なものの感覚入力を経験する
1~2歳:生理的な指しゃぶりの延長と考えられ、特にやめさせる必要はない
口や手が周囲とのおしゃべりや遊びに使われるようになると減少する
3~4歳以降:習癖化しやすく、歯列・咬合への影響が生じやすい
→やめさせる必要がある
2.指しゃぶりの歯列・咬合への影響について
(1)上顎前歯の唇側傾斜 ・開咬
・指をくわえることで、矢印の方向に力が加わり出っ歯となります。
・指をくわえることで、空間ができ、奥歯がどんどん伸びていきます(子どもの歯って伸びるようです)。
・指を入れていない状態でも、常に口が開く、開咬という状態になります。
(2) 上顎歯列弓の狭窄, 臼歯部 (奥歯) 交叉咬合
正常な状態では、歯には頬からの圧と舌からの圧が均等にかかっていてバランスをとっています (下図・左) 。指しゃぶりをすると、指により、舌が下方に押し下げられそのバランスが崩れます (下図・右) 。
上の方において、臼歯 (奥歯)が舌の方に移動してきます。それにより、 上顎歯列弓の狭窄が起こります。
また、上顎歯列が狭窄し、下顎にあまり変化のない状態と上下の臼歯 (奥歯)が過萌出 (過成長)することにより、臼歯部 (奥歯)の交叉咬合という状態を引き起こします。
3.指しゃぶりをやめさせるには (小児科的)
・理解できるように説明する (4歳以降~)
やめる必要性が理解できれば、自らやめられる小児もいる
指しゃぶりの影響を写真や模型で見せる
・指しゃぶりに関する絵本を読む
・夜、寝る際に、子どもの指しゃぶりする側の手と握手した状態で寝るようにする
・記憶療法 (ゆびしゃぶりをやめることは理解しているが無意識に行ってしまう場合)
リマインダーとして指に絆創膏を巻き、指をしゃぶろうとしたときにやめることを
思い起こさせる方法
・行動療法
ある活動の時に、指しゃぶりをしなかったら、「ほめる+シール1枚」
指しゃぶりをしていない時があったら 「ほめる+シール1枚」
シールが一定枚数 (例.20枚) たまったら、大きなご褒美 (映画を見に行くなど)
4.歯列不正の治療 (歯科的な内容)
・歯列不正の治療として矯正治療があります。
・口腔機能の発達訓練
ゆびしゃぶりが改善後も、口唇閉鎖不全や舌突出癖が残ることがあります。
口唇閉鎖訓練, 口輪筋のマッサージ, 口唇のストレッチなどが必要となることが
あります。
参考文献
1.井上美津子, 指しゃぶりはやめさせたほうがよい?いつまでさせていてよい?, 小児内科, 54, 965-966.
2.新谷誠康, 他. 「指しゃぶり」幼児期後半から就学後の対応, 日本歯科医師会雑誌75巻1付録 , 33-37