お母さんからの質問「舌を出したときにハート型になるんですけど」~舌小帯短縮症

今日は、2歳児のお母さんからの質問「舌を出したときにハート型になるんですけど

にお答えします。これは、舌小帯短縮症が考えられますね。お母様には、

今は経過観察で。5~6歳頃になっても、明らかな症状(ハート舌,舌の挙上困難)があり、言葉が聞き取りにくいなどの症状があれば手術適応となる可能性があるので、対応可能な耳鼻科に紹介します」とお話ししております。

 

今日は、舌小帯短縮症について解説していきたいと思います。

1.舌小帯とは

舌小帯とは舌の下にある膜状のヒダです。

正常な舌小帯。http://tomizuka-dental.com/n-5new/n-5-05より引用

 

2.舌小帯短縮症とは?

舌小帯が短く下の先端側に付着してうまく舌を動かせない状態です。

症状として、1) 舌の突出時にハート型にくぼむ (下図・左) 2) 開口した状態で舌の先が上に上がらず、口蓋 (天井の硬い部分)に付かない(下図・右)、などがみられます。

文献より引用

 

3.日常生活で困ることは?

乳幼児期の哺乳障害や摂食障害は極めてまれです。幼児期に発音の不明瞭さをみとめることがあります

 

4.治療方針

成長に伴い正常な形態へと変化することもあるので、乳児期は哺乳が出来ていて、体重増加が良好であれば、手術の適応はなく、様子を見ます。3歳頃より必要に応じて、舌の機能訓練や言語訓練を言語聴覚士に依頼します。3歳頃では発音障害の評価は困難だからです。5~6歳頃になっても、明らかな症状(ハート舌,舌の挙上困難)があり、言葉が聞き取りにくいなどの症状があれば手術適応です。なお、術後も訓練が必要です。

 

参考文献

1.小方 清和,【子どものコモンな微徴候・微症状】口・歯 上唇小帯や舌小帯が短い,
小児科. 2021;62:1035-1040.
2. 小方 清和, 小児歯科セミナー 小児の舌小帯、上唇小帯、粘液嚢胞の治療方針 患児・家族説明のポイントと外科手術, DENTAL DIAMOND. 2019;44:51-62.
3.松田 光悦, 【エビデンスに基づく手術の適応とタイミング】舌小帯・上唇小帯短縮症,
小児外科. 2014.;46:777-780.