今日は、4種混合ワクチンに含まれる百日咳ワクチンについて解説します。
1.百日咳とは?
百日咳とは、百日咳菌 の産生する毒素 (pertussis toxin :PT) によって引き起こされる感染症です。名前の通り、無治療だと咳が100日間続きます。咳は特に乳児で、発作性の咳き込み、吸気性笛声、咳き込み後の嘔吐をみとめます。発作性の咳き込みは、5~10回以上続く、連続的な咳き込みです。吸気性笛声は、大きな努力性吸気が狭くなった声門を通過する音です (動画:Infant girl with whooping cough - YouTube)症状は、夜間に強く、チアノーゼ、無呼吸、まぶたの腫れもみとめます。生後3カ月未満は重症化しやすく、約50%が無呼吸、1%が痙攣、死亡します。小学生以上でも、咳嗽により、長期間の学校欠席を要したり、強い症状を認めることがあります。
潜伏期は約7~10日です。2018年1月1日から全ての医師が全ての診断例の届出を行う5類全数把握対象疾患へと 変更されました。
治療はマクロライド系抗菌薬 (クラリスR)を使いますが、百日咳の症状は毒素によるものなので、病状改善効果は低いです(百日咳菌をたたいても毒素が残る)。しかし、除菌により、周囲への感染を防げ、治療開始後5~7日間で菌は陰性となります。しかし、中国で、マクロライド耐性百日咳の報告もあり、その動向には注意が必要です。
2.ワクチン
4種混合ワクチンに含まれ、標準接種スケジュールとして、0歳時に3回, 1歳時に1会の計4回接種します (就学前に3種混合ワクチンの追加接種が推奨されておりますが、これは他の記事で解説します)
下記に2019年の国立感染症研究所から報告された、重症化しやすい時期である生後6か月未満のデータを紹介します。
4種(3種)混合ワクチンは現時点では、生後3か月からなので、生後3か月以下は、接種歴のない例(オレンジ)が当然多くなります。しかし、良い知らせがあります。2023年4月より、生後2ヶ月から4種混合ワクチンが接種可能となります。これにより少しでも百日咳により重症化する乳児が減るとよいですね。
参考資料