今日は乳児血管腫についてお話させていただきます。10年前は経過観察あるいはレーザー治療でしたが、内服治療の登場により、早期に専門施設に紹介させていただくケースが増えてきました。一般の方向けに少しでも分かりやすく解説させていただければと思います。
血管内皮細胞の腫瘍性増殖による良性腫瘍です。日本人の有症率は1.7%で。男女比は
1:3~9と女児の割合が高いです。
病型は、局面型, 腫瘤型, 皮下型, 混合型の4種類に分かれます。
2.どのように経過するの?
出生直後~乳児期早期に現れ、1歳まで増大し、その後徐々に退縮していきます。
しかし、完全に消失せず、瘢痕を残すことも少なくありません。
5か月までにピークに達するので、専門医への紹介は遅くても生後5か月までにする必要があります。ピークに達した後の治療開始では、瘢痕の残存減少は期待できなくなるようです。
2.専門医へ紹介すべき状況とは
・顔面の血管腫
眼周囲:視力への影響
鼻・耳:美容的な問題
口唇:授乳困難, 摂食困難
下顎部, 口腔内:気道閉塞
・前腕, 肛門周囲, 陰部の血管腫 (擦れる部位)
出血, 潰瘍形成のリスクが高い
・頭皮に生じた大きな血管腫
無治療では脱毛のリスクがある
・多発性に発症
3.内服治療について
確定診断後、適応のある例に対しては、
生後5週以降より、β遮断薬であるプロプラノロール塩酸塩 (ヘマンジオルR) という内服薬が可能となります。米国小児科学会の乳児血管腫診療ガイドラインにおいては、できるだけ早期の治療導入がのぞましい、とされています。
重大な副作用として低血圧, 徐脈, 低血糖がありますので、導入は入院で行われます。
治療可能な施設は↓↓
都道府県の選択 | 乳児血管腫診療施設 | マルホ株式会社 (maruho.co.jp)
レーザー治療は、紅斑やわずかな赤みが残った病変には有効ですが、腫瘤型や皮下型の場合、深部血管には届かないので、血管腫の増大の抑制効果は期待できません。
内服治療は病変を全体的に縮小させ、レーザー治療は皮膚表面の病変のみを改善させまるというイメージです。
これまでは、「いずれは小さくなるから経過観察」とお話することも多かったのですが、治療の選択肢が増えたことと、できるだけ早期の治療がのぞましい、ことから
早期に専門施設にご紹介させていただいております。