鶏卵アレルギー例は塩化リゾチーム含有デオドラントスプレーに注意が必要かも?

今日は、アレルギー専門医としてアレルギーに関する話しを。 

デオドラントスプレー (消臭・防臭など臭いをケアするアイテム。殺菌成分が配合されているので、ニオイの元となる雑菌の繁殖を抑える効果があると言われている)を使用した鶏卵アレルギーの生徒がアナフィラキシーを起こした事例を紹介します。

 

論文は、

筆頭著者:西ヶ野 圭祐

タイトル: 塩化リゾチーム含有デオドラントスプレーによりアナフィラキシー症状を呈した鶏卵アレルギーの1例

雑誌:アレルギー. 2022.;71:135-139.

です。

 

症例は10歳女児で、鶏卵アレルギー, 気管支喘息 (症状は安定), アレルギー性鼻炎を有しておりました。鶏卵アレルギーは、乳児期に全卵スープを接種後に全身の皮膚の赤みという形で発症しております。鶏卵については卵白2g相当が摂取可能な状態でした。

10歳8ヶ月時、卵白由来塩化リゾチームを含有するデオドラントスプレーを後頚部, 体幹部に20~30cm離れたところから数秒ずつ散布したところ、すぐに皮膚症状が出現しました。抗ヒスタミン薬(抗アレルギー)を内服し、シャワーを浴びたが、喘鳴と顔色不良をみとめたため救急搬送されました。

 

後日、実施した検査により、デオドラントスプレーに高濃度に含有される塩化リゾチームによるアナフィラキシーと診断されました。

 

リゾチームは細菌の細胞壁に含まれるムコ多糖類を分解する酵素の総称で、ヒトを含む多くの動植物組織に広く分布し、抗菌・抗炎症作用を示します。特に鶏卵に多く含まれ、鶏卵から精製されるリゾチームは以前より有効成分として医薬品に使用されてきました。2015年12月より有効成分としてリゾチームを含む医薬品の新規承認はなくなりました(若い時に、リゾチームを含む感冒薬を内服後にアナフィラキシーを起こした鶏卵アレルギーの乳児例を経験したことがあります)

 

では、卵白2gを症状なく摂取可能な児が、なぜたかだかスプレーで強いアレルギー症状が誘発されたのでしょうか?鶏卵アレルギーの一部はリゾチームにも反応する(リゾチームの特異的IgEが上昇)するのですが、卵白の特異的IgEとリゾチームの特異的IgEは必ずしも相関するわけではないようです。つまり、卵白IgEが低値であっても、リゾチームIgEが高値の例は存在する可能性 があります。したがって、鶏卵アレルギー児においてはその重症度に関係なくリゾチームに対して注意する必要があります

 

医薬部外品や化粧品に含まれる塩化リゾチームは表示が義務付けられているものの、鶏卵由来であることの記載がない場合が少なくありません。鶏卵アレルギー児は、リゾチームを含むハンドソープや消毒液に注意が必要かもしれません

 

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