先日、外来でお母様から産後の脱毛についてご相談をいただきました。皮膚科ですでにお薬が処方されておりますが、改善せず、困っていらっしゃいました。専門外ではありますが、何か出来ることはないかと調べてみました。
(1) ヘアサイクル(毛周期)について
髪の毛は、成長期→退行期→休止期 (3~4ヶ月)というサイクルを繰り返しています。休止期は、髪の毛を成長させる毛母細胞がほとんど消滅し、髪の毛が抜けやすい状態です。その後、成長期に戻ると、毛母細胞から再び新しい髪の毛が生えてきます。
一般的に髪の毛の85~90%が成長期にあり、残りの10%弱が休止期にあるといわれています。その割合が保たれることにより、髪の毛が維持されます。
(2) 出産後の脱毛症はどのようにして起こるのか
休止期脱毛の一型と考えられています。妊娠後期にエストロゲンというホルモンが毛包に作用し、休止期への移行が遷延し、本来は休止期に抜けるはずの毛が残ります。そして、分娩後に一気に休止期に入るため、通常より抜け毛が増加します。
通常が約85%の成長毛が妊娠4ヶ月以降より約95%になります、その後、出産後6週~6ヶ月頃までは約75%と著明に低下していきます。(Lynfield YL: J Invest Dermatol, 53: 323-327, 1960)
(3) 出産後の脱毛の特徴は?
110例のまとめによると、(斉藤隆三:北里医学,8:260-263, 1978)
1.脱毛の開始は出産後3ヶ月頃が多い
2.脱毛の持続は3ヶ月間が最も多い (しかし、4年持続した例もあり)
3.頭髪全体が82例と最も多い。前頭部20例, 頭頂部5例
4.頭髪以外の体毛の脱毛はない
5.母親の年齢, 妊娠経過, 分娩経過とは関係ない
我部山らの報告(我部山キヨ子:周産期医学, 32:1559-1564, 2002) によると、
・重度の疲労
・5.5時間/日未満の睡眠
・髪の長さがセミロング・ロング
・髪のパーマ有り
・洗髪の回数が2日に1回以下
・ブラッシングの回数が、1日に3回未満
が脱毛と関連していた。
(4) 治療は?
自然に回復するので不要
お母様が、睡眠を確保し、髪の手入れに時間をかけられるよう、サポートが必要
ですね。