研究するのがとても大変になった

 最近、クリニックでの臨床研究について某所に問い合わせたところ、以前よりも研究を企画し、行うのが難しくなったことが分かりました。

 例えば、気管支喘息の患者さんの5年間の経過をカルテより振り返りまとめるというような研究を企画するとします。当然、50名のうち38名が吸入ステロイド薬を継続していましたなどと記載され、個人名などは当然記載されません。こういった患者さんの経過を後で振り返ってまとめる研究 (後方視的観察研究)は、12~13年前(記憶が不確かであったらすみません)ほどであれば特に院内などの倫理委員会での申請や同意書の取得など手続きは必要なく手軽に実施できました。その後、こうした、後方視的観察研究でも、院内の倫理委員会で申請することが必要になってきました (開業医であれば、医県の医師会や学会に申請)。また、オプトアウトと言って、院内の掲示板やHPに研究の目的など概要を記載し、患者さんが研究の存在を知り、いつでも拒否できる体制を取ることが必要になりました。この1~2年で条件はさらに厳しくなり、オプトアウトも認められず、患者さんより文書での同意書を取得することが必要になりました。

 このように研究に対する条件が厳しくなったのは、残念ながら、不正をする例が後を絶たないからです。不正というとこの人の事が浮かぶかもしれません・。

STAP細胞の研究員に「研究不正行為」の判断が下る | 幹細胞特集 | Nature 特別翻訳記事 | Nature Portfolio

また、高血圧薬のデータ改ざんに製薬会社が関与した事件もありましたね。

高血圧薬データ改ざん ノバルティスファーマ無罪確定へ 最高裁 | NHKニュース

降圧薬の論文に関しては、不正以前に、論文の内容自体にたくさんの問題があったんですけどね・・・。論文を読まずに製薬会社の宣伝をそのまま鵜呑みにしてしまうような

先生方は疑いなく使用してしまったことでしょう。私も気をつけなければ・・・。

こうしたことから、だんだん臨床研究を行うに当たってのルールや手続きがこの10~20年の間に急速に増え、膨大なものとなってしまいました。まさに一大プロジェクトです。書類だけで何十枚下手すると100枚ごえとなってしまいます。新しい薬物を使うグループと使わないグループに分けて比較するような、すなわち研究のグループ分けによって、患者さんの経過が変わってくるような研究 (介入研究)なら分かりますが、診療所で行う、患者さん達の経過を振り返るような研究や患者さんへのアンケート調査など、身の丈にあった研究にそこまで厳しくする必要はあるのでしょうか?不正するような人はいくらでも網の目をくぐり不正するでしょう。はっきりいってイタチゴッコで大部分の良識のある研究者への負担ばかりが増大してきます。研究の内容によっては、もっと負担が少なくなるようメリハリをつけてほしいなと思います。若手の先生は最初は、小さな研究から入るのですが、あまりにも負担が大きいと、チャレンジする人が減っていき、ひいては、国内での臨床研究の数も減っていくのではないでしょうか。不正を減らすことばかりに集中するあまり、もっと大事な事を失ってしまう気がします。

こんなグチを吐きつつ、もっか、研究計画書を作成中です。

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