5~17歳のオミクロン株に対する新型コロナワクチンの効果

今日は、先月、米国のCDCより報告された、小児に対する新型コロナウイルスワクチン(ファイザー社)のオミクロン株への効果を共有させていただきます (遅くなりすみません💦)

Effectiveness of COVID-19 Pfizer-BioNTech BNT162b2 mRNA Vaccination in Preventing COVID-19–Associated Emergency Department and Urgent Care Encounters and Hospitalizations Among Nonimmunocompromised Children and Adolescents Aged 5–17 Years — VISION Network, 10 States, April 2021–January 2022 | MMWR

 

対象は、2021年4月~2022年1月の間に、米国の10の州の救急外来を新型コロナウイルス感染症が疑われる症状で受診した5~17歳, 39,217人です。

研究は、症例・対照研究 (case-control design) という方法で行われました。これは、

新型コロナウイルス感染症様の症状で受診した人を症例 (検査で陽性) と対照 (検査で陰性)に分けます。そして、症例・対照をそれぞれワクチン接種・未接種に分け、ワクチンの予防効果を推定していきます。

なお、この研究では、デルタ株, オミクロン株などの同定まではしておりません。時期によって、デルタ株の多い時期、オミクロン株の多い時期として評価しております。

便宜上、オミクロン株への予防効果という記載をしておりますが、実際には、オミクロン株の多かった時期における予防効果となります

 

結果です。

まずは5~11歳のオミクロン株への予防効果です。

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新型コロナワクチンを受診14~67日前に2回目の接種をしていた例では、オミクロン株に対する予防効果(95%信頼区間)は51 (30~65)%でした。

※95%信頼区間はざっくりいうと、100回中95回, ワクチンの効果がその範囲に含まれる  ということです。

次に、12~15歳のデルタ株とオミクロン株への予防効果についてです。

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まずは、デルタ株に対する感染予防効果についてです。

新型コロナワクチンを受診14~149日前に2回目の接種をしていた例では、デルタ株に対する予防効果(95%信頼区間)は92 (89~94)%でした。150日以上前に2回目の接種を完了していた例では、予防効果(95%信頼区間)は79 (68~86)%。つまり、デルタ株に対しては、月日の経過に伴い予防効果は落ちるものの、感染予防効果はある程度保たれてました

それに対して、オミクロン株については、受診14~149日前に2回目の接種をしていた例では、オミクロン株に対する予防効果(95%信頼区間)は45 (30~57%) でした。さらに、150日以上前に2回目の接種を完了していた例では、予防効果(95%信頼区間)は-2(-25~-17)% でした。オミクロン株に対しては、2回接種から5ヶ月以内であれば、デルタ株ほどではないものの、一定の予防効果は期待できます。しかし、5ヶ月以上経過すると、予防効果は見られなくなりました。なお、3回接種例については、数が少なく解析されておりません。

最後に、16~17歳のデルタ株とオミクロン株への予防効果についてです。

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まずは、デルタ株に対する感染予防効果についてです。これは、12~15歳と同じ傾向ですね。

新型コロナワクチンを受診14~149日前に2回目の接種をしていた例では、デルタ株に対する予防効果(95%信頼区間)は85 (81~89)%でした。150日以上前に2回目の接種を完了していた例では、予防効果(95%信頼区間)は77 (67~84)%。つまり、デルタ株に対しては、月日の経過に伴い予防効果は落ちるものの、感染予防効果はある程度保たれてました

それに対して、オミクロン株については、受診14~149日前に2回目の接種をしていた例では、デルタ株に対する予防効果(95%信頼区間)は34 (8~53%) でした。さらに、150日以上前に2回目の接種を完了していた例では、予防効果(95%信頼区間)は-3(-30~-18)% でした。オミクロン株に対しては、2回接種から5ヶ月以内であれば、デルタ株ほどではないものの、一定の予防効果は期待できます。そして、5ヶ月以上経過すると、予防効果は見られなくなりました。しかし、3回目の接種をうけて1週間以上経過した場合、その予防効果(95%信頼区間)は、81 (59~91%)と復活します

 

以上より、小児において、オミクロン株に対する、新型コロナワクチンの効果は、接種後、短期的には効果はあるが、数ヶ月で低下してくるということが言えると思います。

 

最初に2回接種して基礎免疫をつけておき、流行の拡大の傾向が見られ始めた時に接種するのがベストかなと思います。しかし、それでも発症予防効果は長く続くかどうかは不明です。