先日、外来で第2子を妊娠中のお母様より (第1子が食物アレルギーを発症。今は治癒)
「次に産まれる子のアレルギー発症を予防する方法はありますか?」と聞かれました。
今日は、とてもインパクトのある論文をご紹介したいと思います。
論文名:Primary Prevention of Cow's Milk Sensitization and Food Allergy by Avoiding Supplementation With Cow's Milk Formula at Birth: A Randomized Clinical Trial
筆頭著者Mitsuyoshi Urashima
雑誌:JAMA Pediatr. 2019 Dec 1;173(12):1137-1145.
まずは、ざっくりとしたポイントですが、アレルギー疾患の家族歴のある新生児に対して、生後3日間以内の人工乳の摂取を避けると、牛乳アレルギーのみでなく、他の食物アレルギーの発症を予防できる可能性がある
詳細は、以下へ
✎どんな研究?
・アレルギー疾患の家族歴のある新生児が対象
・生後3日間の人工乳摂取を避けた(母乳+アミノ酸乳のみ) (生後4日目以降は人工乳への切替え可能)156名 vs 生後24時間以内に人工乳を追加した156名
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人工乳は、ほほえみ (明治)
・2歳時点での 1) 牛乳への感作状況 (抗体価の上昇 0.35以上) 2) 即時型食物アレルギーの発症を比較
✎結果は?
(1) 2歳時点でのアレルギー検査での牛乳IgEの上昇
生後3日間の人工乳摂取を避けた群 (BE/EF群)は牛乳の感作が16.8%に対し、生後24時間以内に人工乳を追加した群 (BF+CMF群)は32.3%と有意な差をみとめた。生後3日以内の人工乳摂取を避けることで、牛乳の感作のリスクが48%減少した。生後5ヶ月の血中ビタミンDで3つにグル-プ分けすると、ビタミンD値が真ん中のグループでのみ、EE/EF群とBE/CMF群で有意な差を認めた。
なお、鶏卵では、同様の傾向は見られなかった。
また、この研究では、母乳/EF群の方は、後で、EF (アミノ酸乳)から人工乳にスイッチ可能であったが、人工乳に切り替えた時期が早いほど、牛乳IgEが上昇する傾向があった
(2) 牛乳アレルギーの発症予防効果
2歳時点の食物アレルギーの累積発症率は、牛乳のみでなく、鶏卵, 小麦も、母乳・EF群は母乳/人工乳よりも低かった (小麦のみ統計学的な有意差はなかったが、おそらく例数が増えれば有意差をみとめると思います)。生後3日以内の人工乳の摂取を避けることで、牛乳アレルギーは90%, 鶏卵アレルギーは43%も発症リスクが低下した。
2歳時点での鶏卵・牛乳アレルギーの有病率 (2歳までの治癒しなかった人)やアナフィラキシータイプ (重症)の食物アレルギーの発症率も、同様の傾向で、母乳/EF群の方が
有意に低いという結果であった。
(感想) とてもインパクトのある論文ですね。全国の産院に知っていただきたい内容です。アレルギー疾患の家族歴にあるベイビーだけでも、人工乳ではなく、出生後3日は、母乳のみあるいは母乳+アミノ酸乳で対応していただきたいところです。ていうか、これは国をあげて取り組む価値のあることかもしれません。これだけで、食物アレルギーの発症を予防できるとなると、費用対効果も高いと思います。
あと、追加すると、生後の皮膚の管理も重要かなと思います。論文では触れられていませんでしたが、著者等は外来で、対象者が湿疹をみとめたら、徹底的に管理していたようです。