園児もマスク着用の方向に?

昨日、以下の記事を見ました。

news.yahoo.co.jp

現在の推奨は、この過去記事をご参照ください

 

teammanabe.hatenablog.com

 

最近、園児のマスク着用状況について検討した論文を読みましたので紹介させていただきます。

論文名:コロナウイルス感染症2019流行下における幼児のマスク着用と保護者の認識

筆頭著者:高崎麻美

雑誌:日本小児科学会雑誌, 125:11:1581-1584

 

研究1

対象富山市立幼稚園2施設の3歳児クラス17人、5歳児クラス17人の合計34人

方法

・マスクの正しいつけ方の指導を行う (鼻と口の療法を覆う、マスクの表面には触らない、息苦しさを感じたらマスクをはずす)の指導をする

・マスク着用時(2020年6月) (指導前・後)と3ヶ月後(2020年9月)のマスク非着用時の計3回、20分間着座して作  業する様子を医師が観察する

・園児への指導は幼稚園教諭が降園前に行い、翌日午前中に指導後の観察を行った 

評価項目

1)マスクを有効に活用できている児の割合

2) マスクの表面や眼・鼻・口にふれる回数

結果:

1) マスクを適切に着用できていたのは5歳児52.9%, 3歳児29.4%で指導後も変化

 はなかった。

2) マスク着用下ではかえって非着用時よりも眼・鼻・口を触る頻度が高くなり、5歳児クラスでは統計学的な有意差が見られた (0.76±1.7)   

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文献の図にミスを修正し引用

研究2:

研究1より著者らは、園児は有効なマスク着用は難しく、デメリットも考慮し着用を推奨しない方針となった。

その際、保護者にアンケート調査を実施した。

保護者の66.8%が適切にマスクを着用できていないと回答した一方で、54.5%がマスクを外すことに不安を感じていた、その理由感染リスクが高まることが最多であった。

その後、リーフレット配布やメディアとの協働で相互理解を図り、2021年5月まで大きな問題なく過ごしている。

 

著者らの結論:マスクは感染対策の一手段にすぎず、発達段階に合わせて他の実効的な手段を重視する判断も必要である。

 

私の感想

本題からずれるが、表の数値に過ちがあり、統計的な差も「あり」「なし」しか記載されておらず(通常はp=0.09など数値で記載)きちんと査読がされているのか不安になった。また、指導前後で変化なしとされているが、マスク着用の指導も園教諭が前日の帰宅前に行っているが、3歳児や5歳児は翌日にが忘れてしまうのではないかと思う。

しかし、園児達にとって正しいマスク着用は容易でなく、保護者もそれを認識しているものの、マスクをはずすことに不安を感じている,という知見は重要と思われる。

現在は、園児同士の感染も少なくない。園内の感染管理+保護者の不安で考えると、換気や昼食時に対面にならないようにするなど他の感染対策をしっかり実施した上で、出来る範囲で園児達にマスクを着用してもらうのが無難と考えられる。その際に、年齢ではなく各個人の発達段階で考えてあげる、分かりやすい正しいマスク装着の指導(イラストや実際に鏡を用いる)、園児同士の過剰な注意への対応(マスクを正しく装着出来ない子が他の園児より注意されるケースがある)、発達障がい児の触覚過敏(マスク装着を嫌がる)や触覚抵登録(マスクを噛む)への理解などが必要である。まあ、とにかく何事も状況に応じて、バランス良く対応していくってことですね。