今日は、小学校通常学級スペクトラムスペクトラム (ASD) 特性を強くもつ児童の概数とその特徴について調査した報告を紹介します。
論文名:茨城県における小規模調査での小学校通常学級に在籍する自閉スペクトラム特性を強く持つ児童の概数とその特性~自閉スペクトラム指数の分析から~
筆頭著者:深谷雅博
雑誌:小児の精神と神経 61:63-71, 2021
🚂研究の目的
通常学級に在籍するASD特性を強く持つ児童の概数とその特性を調べる
🚂対象と方法
・茨城県X町立小学校3校より、調査の同意の得られた300名より70名を無作為抽出
※無作為とは調査する人が自由に選択できない、くじ引きのようなもの
・AQ-J児童用を担任が記入
※AQ-Jとは?
ASDのアセスメントツールで7~15歳が対象。児をよく知る他者が記入する
50点満点で、社会的スキル, 注意の切替え, 細部への関心, コミュニケーション,
想像力の5つの領域(各10点満点) に分かれる。25点以上でASD傾向が強いと
判断する。当院の外来でも対象となる方には実施しております。
🚂結果は
(1) 全体の結果
中央値 (下位25%-上位25%)は、12(9-17) 点であった。各項目の中央値 (下位25%-上位25%)は、細部への関心が4.0 (3.0-5.0) と他の項目よりも高かった。
25点以上をASD群とすると、ASD群は8人 (11.4%) であった。
(2) ASD群 vs 定型発達群
社会的スキル、注意のきりかえ、コミュニケーション、想像力の4項目はASD群の方が有意に高かったが、細部への関心は差がなかった。
🚂この研究より言えること
・通常学級にASD特性を持つ児童は11.4%
・社会的スキル、注意のきりかえ、コミュニケーション、想像力において、ASD群の
方が高く、行動面や社会性に差が見られる。
⚡感想
各学級に一定の割合で自閉スペクトラム症 (ASD) の傾向を有する児童が存在することをしめす興味深い研究である。しかし、調査した地域が茨城県のX町で限定されている、お子様の行動が気になる保護者が調査に同意した (協力率71.3%) など、調査対象に偏りがあり、実際より、ASDの割合が高く算出されている可能性がある。その一方で、
学校で過剰適応している児は見落とされている可能性がある。
少なくともASD特性を持つ児の割合は、喘息やアトピー性皮膚炎などメジャーな疾患とほぼ同等であり、学校の先生方には、その特性とアプローチ方法についてしっかり学んでいただく必要はありますね。