【論文紹介】ADHDに併存した夜尿症の治療

今回は、2例の報告ですが、注意欠如多動症 (ADHD) に併存した夜尿症に、ADHDの治療薬であるグアンファシン (インチュニブR) により改善が得られたという報告を紹介します。

 

論文:Guanfacineにより改善が得られたADHDに依存した夜尿症の2例

著者:大橋圭 (愛知県海南病院小児科)

雑誌:小児の精神と神経 60:233-238, 2020

 

背景

ADHDは定型発達児と比較して夜尿症の有病率が高い (特に不注意優性型) 

発達障害を伴う夜尿症は定型発達児と比較して標準的な治療への反応が悪い

ADHDの治療薬である。メチルフェニデート (コンサータR) やアトモキセチン (ストラ テラR) により夜尿症が改善した報告も散見される

症例1

7歳男児ADHD。屋尿のない日 (成功率) は10%未満であり、標準的な治療薬であり、デスモプレシン (ミニリンメルトR) を240μg/日 (最大量)まで使用しても改善しなかった。グアンファシン (インチュニブR) を開始後数日で夜尿症は改善し成功率が100%となった。ADHD症状である多動・衝動性・不注意は改善し、度々認めていた中途覚醒も改善した。

症例2 

11歳女児。自閉スペクトラム症+ADHD。8歳より近医で夜尿症の治療を受けたが成功率は30%ほどであった。グアンファシン (インチュニブR) 1mgとメチルフェニデート (コンサータR) それぞれ単剤の時は屋尿の頻度は変化しなかったが、両者の併用後、数日で夜尿は消失し、成功率はほぼ100%となった。起床もスムーズになった。その後、対人関係の悪化より不登校気味となり、起床がスムーズでなくなったが、夜尿症の再燃はない

著者の伝えたい事

・睡眠の質の改善が夜尿症の改善と関連があることが示唆された

ADHDに併存した夜尿症の治療薬として、グアンファシン 選択肢の一つになりうる

 

所感

先日の児童精神青年医学会でも同様の症例報告がされており、ADHDに併存した夜尿症に対する、ADHDの治療薬による効果は注目されているのかなと思います。夜尿は数日の経過でいきなり改善することはないので、論文の2症例も効果があったのでしょう。中止して夜尿症が再燃するかどうかみれれば良かったのですが、倫理的に少し難しいですよね。睡眠の質改善で夜尿症が改善するとなると、メラトベル服用で改善するのか興味があります。