【学会メモ】自閉スペクトラム症と聴覚過敏

学会メモでは、各種学会のオンデマンド配信でとても有用だった内容を紹介しております。今回は、日本児童精神青年医学会より。自閉スペクトラム症と聴覚過敏について講演がとても面白かったので、演者の先生の迷惑にならなさそうな範囲で共有させていただきます。

 

自閉スペトラム症児の69~95%に、聴覚, 視覚 前庭感覚, 嗅覚, 固有覚など様々な感覚の感覚調整障害 (感覚過敏・感覚鈍麻)が見られる。

・これは、睡眠障害, 注意の問題, 不適応など様々な問題と関連

6~9歳で最も顕著

・アンケート調査でもっとつらいと回答されたのは「聴覚」の問題

自閉スペクトラム症児は定型発達児と比較して聴覚性驚愕反射の弱い音への反応が増大、潜時 (ピークまでの時間が延長)  

🎤解説

驚愕反射とは、突然の強い感覚刺激により、まばたきや体幹・上肢を屈曲させるような動きが誘発されると同時に、恐怖・不安やドキドキ、呼吸数増加が引き起こされる反応です。通常は、90dBぐらい(パチンコ店ぐらい)でこの反射が増大しますが、自閉スペクトラム症児は、60dB (スーパーぐらいの環境)で増大します。また、定型発達児と比べて反射がピークに達するのに時間がかかります。話しかけてもすぐに反応できない、右から左へという状況と関連している可能性があります

感覚特性の問題は、周囲から気付かれていない場合だけでなく、本人が自覚していな いこともある。

🎤解説 

自覚的な聴覚過敏特性の程度と聴覚性驚愕反射を認める音圧や反射の大きさは関連しないといった報告や保護者による聴覚特性の評価が高閾値 (鈍麻) であっても、本人は弱い音に対しても聴覚性驚愕反射が見られた(鈍麻なら反応しないはず)という報告があります。

・教室の音環境は、通常の教室で60~70dB, 教師の声の平均は65dB  

  →お子様によっては配慮が必要

・著者の先生の取り組みの紹介

 映画館やスーパーマーケット、サッカー競技場などの社会生活空間での感覚に優しい(sensory friendly)環境を提供

www.kochi-u.ac.jp

 

📖所感📖

感覚調整障害への対応は自閉スパクトラム症児への対応の柱の1つだと思います。しかし、外来の場でも、周囲が気付いていないことも少なくなく、JSI-Rという簡単な評価ではひっかかってこないこともしばしば経験されます。外来で繰り返し確認していくことが大事かなと思います。