今日は、自閉スペクトラム症 (ASD)や注意欠如・多動症 (ADHD) の乳幼児期の神経発達軌跡を調査した報告を紹介します。
著者:土屋賢治
タイトル:ASD特性・ADHD特性をもつ子どもたちの乳幼児期における神経発達の軌跡
-浜松母と子の出生コホートから-
雑誌:小児の精神と神経 60:214-217. 2020
対象者:浜松母と子の出生コホート研究 (HBCstudy) の参加者のうち6歳まで追跡した 831名。なお、HBV studyは浜松医大付属病院および近隣1産院を2007年10月~2011年3月の間に妊婦健診で訪れる全妊婦を募集対象としている。
方法:
・児を6,10,14,18,24,32,40ヶ月および6歳で神経発達評価。
・評価は、Mullen Scales of Early Lerarningにより行い、児の粗大運動、微細運動、視覚受容、表出言語、受容言語の5領域において評価
・6歳時に自閉症診断観察尺度第2版 (ADOS-2)とADHD評価尺度を実施
→男児別に分け、ADOS-2上位10%をASD群、ADHD評価尺度上位10%をADHD群
→ASD群、ADHD群、ASD+ADHD群、非ASD非ADHD群の4グループに分けた
結果:
・ASD群+ADHD群は5つの全ての領域において生後6ヶ月~6歳まで一貫して低下
とくに微細運動 (Fine motor)と 視覚受容 (Visual reception) の遅延が特徴
・ASD群は、同様の傾向を示したが、微細運動のスコアの低下はなく、視覚受容の低下 幅は少なかった。
・ADHD群は微細運動のみ低下。ただし、受容言語 (Receptive language)は統計的に有意な差はなかったが、低下傾向