自閉スペクトラム症のお子様の特徴の1つに感覚調整障害という、感覚の受け取り方の偏りがあります。例えば、前庭感覚 (バランス感覚) が敏感 (感覚過敏) だと、ブランコを怖がったり、車に酔いやすくなります。その逆に、鈍感 (低登録) だと、姿勢が崩れやすくなったり (よくやる気がないと誤解されます)、テーブルなど高いところに登ろうとします。触覚の場合、敏感 (感覚過敏)だと、洋服のタグを嫌がったり、手がよごれたりするのを嫌がる、工作時にのりに触るのを嫌がります。その逆に、鈍感 (低登録) だと、
歩きながら色々なものに触ったり、ケガをしても気付かないことがあります (火傷や骨折でも泣かず、後で気付かれることがあります)
発達障害の子を理解して上手に育てる本 幼児期編、監修/木村順
https://www.shogakukan.co.jp/pr/90th/310808.html
木村順先生は作業療法士で感覚統合療法でも名のある先生です。感覚調整障害について、その理論と対処方法についてとてもわかりやすく解説してくれています。この本も10段階の10です。クリニックの本棚の上にも置いておきますので、よかったらご覧ください。
乳幼児期の自閉スペクトラム症の療育として、保護者の方に勉強していただきたい事は、構造化 (スケジュール, 見通しをつける)と感覚統合が2本柱で、プラスで年中~年長にかけてペアレントトレーニングの理論かなと思います。
開業当初は、応用行動分析 (ABA) の不連続試行訓練 (Discrete Trial Training:DTT) に取り組むのが1番と思っておりました。これは、簡単にいうと、例えば、「パチパチ」という指示で、お子様がパチパチする、という課題の場合、指示を出してできたら強化子 (お菓子やオモチャなどのごほうび)を渡す、できなかったら反応せず再試行、これを1課題で約10本ほど行います。確かに、この方法は効果あるかもしれません。しかし、外来では特別なことをしなくても、どの子も一定の成長をしていきます。また、ここでは書きませんが、色々な弊害もあります。こうしたことから、今では、ほとんどおすすめしてはいません。ただし、応用行動分析のなかの問題行動への分析はとても大事だと思いますし、ペアトレにも含まれております。
現在は、繰り返しになりますが、構造化 (スケジュール, 見通しをつける), 感覚統合と
ペアトレを組み合わせることによって、親子の愛着形成の促進, お子様の暮らしやすさ成長につながればいいなと考えております。
最後に本を紹介して終わりたいと思います。
構造化のおすすめは、先日記事で紹介させていただいたこの本です。