【論文紹介】食物アレルギー児の保育所受け入れ状況の実態

今日は、食物アレルギー児の保育所受け入れ状況をテーマとした論文を紹介します。

筆頭著者:林典子

論文タイトル:食物アレルギー児の保育所受け入れ状等に関する実態調査

雑誌:アレルギー; 70 (4); 293-301, 2021

 

まずは、要旨から

相模原病院に通院中の食物アレルギー (以下FA)児を対象に調査

・調査時の年齢中央値 (範囲) は4.5 (0~12) 歳、入所時の除去食物は2 (1~11) 品目

・33%にアナフィラキシーの既往あり

12%に入所を拒否された経験あり

・入所前のアナフィラキシーの既往と除去食物5品目以上が入所拒否と関連

 

詳細は以下より、

【方法】2018年9~12月に相模原病院で入院食物経口負荷試験を受けた0~12歳のFA児の

保護者を対象に、保育所などの入所を拒否された経験とその理由についてアンケート調査を実施した。

【結果】

1.対象となったお子様の背景

・205人に調査票を配布し、そのうち有効な回答の得られた168人を解析対象とした

・調査時の年齢中央値 (範囲) は4.5 (0~12) 歳

・入所時の除去食物は2 (1~11) 品目;5品目以上の除去が32人 (19%)

・56人 (33%) に入所前のアナフィラキシーの既往あり、29人 (17%)にエピペンが処方

 🚗 相模原病院通院中の方だけあって、重症度の高い方が多いですね

2.入所拒否について

保育所などの入所を拒否された経験は20人 (12%)

拒否回数の中央値 (範囲) は1.5 (1~30)回で、10人 (50%)に複数回拒否された経験があ った。

・168名、全員、いずれかの施設に入所はできた

入所拒否には入所前のアナフィラキシの既往(オッズ比 2.8)と5品目以上の除去

(オッズ比3.44)が関連。

🚓アナフィラキシがある人はない人よりも2.8倍、5品目以上の除去は4品目以下の除去と比較し3.44倍、入所拒否されるリスクがある

・エピペン処方の有無と入所拒否に関連はなかった

3.入所拒否の理由について

保護者の自由記述より解析

【FA児に関する要因】

<重症児><小麦アレルギー児><多品目除去児><低年齢児><知的障害児>が抽出された。<小麦アレルギー児>は雨の日には小麦粘土で遊ぶため対応できません、などと拒否されていた。

【施設に関する要因】

<FA対応食提供不可><厨房でのコンタミネーション防止不可><他児と離れて食べる場所がない><休ませる場所がない><認可外保育園である><保育時間に長いこども園枠である>が抽出された。

【職員に関する要因】

<症状誘発時の責任が取れない><職員不足><エピペンに抵抗がある><重症児の経験がない>が抽出された      以上

 

【感想】当院に通院中に方からは入所拒否の話を聞いたことないが、重症の方がそれほど多くないからの思われる。しかし、当院に相談していないだけの可能性もある。

私としては、食物アレルギー管理指導標には、除去食物だけでなく、「どれぐらい摂取して、どの程度の症状が出現したか」など詳細を具体的に記載するようにしている。

もし、食物アレルギーを理由に保育所がなかなか入所できない方は気軽にご相談を。もしかしたらお役にたてるかもしれないです。