新型コロナワクチン接種後の死亡例についての考え方

外来で、「新型コロナワクチン、接種後に脳出血を起こすのが心配です」という声を時々耳にします。よくワクチン接種後に○○○例死亡という報道がされているからだと思います。

厚労省が発表した5/30までのデータをもとにお話できればと思います。

https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000791617.pdf

 

ポイントは、

新型コロナワクチン 接種後の死亡例は、14.2人/100万人、10.6回/100万回

・その中には、ワクチンとは関係ないケースも含まれます

・ワクチン接種のメリット・デメリットと感染のリスクを考え判断しましょう

 

まずは、ワクチン接種後の副反応の考え方からお話しします。

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ワクチン接種後に起こったことは、ワクチンと関連なく偶然起こったことも含めて、

副反応疑いとして報告する仕組みになっております。これは見落としのないように、と考えると当然のことと思います。

 

これまで国内で5/30までに報告された死亡例ですが ファーザー社製(モデルナ社製は接種本数がまだ少ないので割愛します)を接種後に死亡した例は139例で、その頻度としては、14.2人/100万人、10.6回/100万回、になります。そのうち、65歳以上118例、65歳未満21例で、死亡原因の上位3つは、出血性脳卒中31例、心肺停止19例、心不全17例と報告されています。いずれも現時点では、死亡関係との因果関係はなしあるいは情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないもの、とされています。

 

もともと、65歳以上の人口約3,600万に対し、2019年度は、約26,000人 (約1,384人に1人)の方が出血性脳卒中でなくなっております。また、高齢者の方は原因にかかわらず、1日あたり約3,650人に1人が救急搬送されていますし、1日あたり約10,600人に1人が亡くなっております。つまり、ワクチンの影響で起こっている可能性もあればワクチンとは関係なく偶発的に起こっている可能性がある (=少なくともワクチンが関与した死亡例はさらに少ない)というこです。

 

私達にできることは、接種によるメリット・デメリットと感染によるデメリットを考えて判断することです。私の場合は、医療従事者という立場と同時に、変異株である英国株やインド株が若い人でも重症化するリスクがある、軽症でも脱毛や嗅覚・味覚障害など後遺症がしばらく続くということより接種を選択しております(嗅覚は診療にとても重要です)接種後もマスクや手洗いなどの感染対策は必須ですが、自分が感染し、それを患者さんに拡大するリスクが大幅に軽減し、精神的なプレッシャーがだいぶ少なくなりました。

 

今回は周回遅れの情報提供となってしまいましたが、皆様の判断の一助となるよう、

常に新しい情報を発信していきたいと思います。