自閉スペクトラム症のお子様には、聴覚過敏の方が少なくありません。大きな音を聞くと、痛みを感じたり、轟音が鳴り響いているように感じることがあります。また、たくさんの音から1つの音を選び出して聞くのが苦手で、小児科診療所や教室では、色々な音が同じレベルで入ってくるので、非常に混乱し、ストレスや疲れの原因となってしまうことがあります。
対処法の一つに、イヤーマフがあります。イヤーマフとは、耳全体を覆うタイプの防音保護具で、工事現場や飛行場などの騒音が大きい場所で、それらの仕事に携わる人の耳を守る道具として使用されてきました。防音効果の高いことより、聴覚過敏を有する方の、苦手な音から自分を守るツールとしても使われています。
これまで外来で、患者さんより、イヤーマフの種類の選び方やどこで購入すればよいか
などの質問を受けることがあるのですが、私も詳しくわからず「通っている療育で聞いてね」と答えておりました。しかし、それではできる範囲で、全てに対応する小児科開業医としては失格だと思い、TASUCの作業療法士の先生に教えていただたことをベースに資料を作ってみました。
👂イヤーマフの効果について
音の強さを表す単位にdB (decibel; デジベル) があります。音は空気の振動(波動)なので、総ての音は波形としてあらわします。音の強さは、波形の大きさで決まります。dBが大きいと大きな音になります。
イヤーマフの性能を表す指標として、EPA(米国環境保護局)が査定した、NRR (Noise Reduction Rating; ノイズ・リダクション・レイティリング)があります。NRRの数値の単位はdBで表示され、統計的に98%の人が防音保護具を着用した時に、数値以上の遮音効果を得られます。また、数値が大きい保護具ほど高い遮音性能を持っていることを表します。
例.飛行場で働いている人 (120dbの環境)が、NRR30dBのイヤーマフを装着すると、90dBの環境 (騒々しい工場内レベル)となります。
👂イヤーマフの選び方
性能, 重さ, 装着性, 価格より選びます。お子様によっては色も大事かもしれません。
(価格は購入方法により変わるので割愛します)
例えば、学校の授業中のザワザワが気になる高校生の場合は、高い音を防ぐ、PELTOR H540Aをおすすめします。学校の先生の声が聞こえなくなるのでは?とう質問がありましたが、人の声は抑揚があるので、聞こうとしている声であれば聞こえるようです。
喘息持ちの方で、発作時に使う吸入器の音が気になる方には、低い音を防ぐ、PELTOR H510Aをおすすめします。
蛇足ですが、喘息発作時の吸入器はジェット式というタイプだと音がうるさいのですが、メッシュ式ですと音がとても静かです。ただし、コストはかかります。メッシュ式ネブライザ | 商品一覧 | オムロン ヘルスケアストア
あるいは、スペーサーという補助器具に発作時の吸入薬をさしこんで使う方法もあります。これであれば、マスクと合わせて2,500円前後で購入可能です。
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/inhalers/feature05.html
触覚過敏がある方、見た目が気になる方は耳栓という選択肢もあります。
・キングジムデジタル耳せんMM1000
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これは環境騒音を打ち消してくれます(人の声は聞こえます)
もっと手軽にという方は、フォーム型の耳栓がありますが、これは、全ての音を打ち消してしまうので、外で使用するときは注意が必要です。
3M 防音保護具(耳栓) フォームタイプ ひもなし スリーエム(3M) 耳栓 【通販モノタロウ】 ST050〜
その他、イヤフォン・ヘッドフォンもありますが、今回は割愛させていただきます。
👂購入方法は?
作業服やヘルメットを扱っているようなお店や、家電量販店でも販売している可能性はありますが、どの店舗であれば取り扱いしているのか探す必要があり、お子様に合う種類があるかもお店によって異なります。ネットで購入される方が多いです。
Amazonはディスカウントされていることがあります。FLY!BIRDというサイト
でも購入できます。レンタルもあるようですね。
👂その他
今回のテーマからはずれますが、他の感覚刺激を入れることも聴覚過敏への対応方法の一つとTASUCの勉強会で教わりました。