先月~今月にかけての健診めぐりでいただいた質問です。
複雑な先天性心疾患児の発達について
まずは、ポイントから
・出生後の低酸素状態や複数回の手術が、人間の高次機能 (認知機能, 社会性・コミュニケーション, 言語発達, 注意機能など)に重要な部位である、前頭前野の発達に影響します。
・多くは順調に発達していきますが、就学して初めて、IQが正常範囲であっても、学習障害が明らかになり、支援が必要と なる児も見られることもあります。
・複雑な先天性心疾患児には長期的な両親・本人へのサポートが必要です。
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1.複雑な先天性心疾患が発達に影響する理由
出生後の低酸素状態や複数回の手術が、人間の高次機能 (認知機能, 社会性・コミュニケーション, 言語発達, 注意機能など)に重要な部位である、前頭前野の発達に影響します。
心疾患児では、前頭葉の容積が正常児と比較して著明に減少しており、その容積が小さいほど発達が遅れる傾向にあることが明らかにされています。
平岩 明子, 市田 蕗子【How to Follow-up Q&A-2018アップデート】予後 先天性心疾患合併児 精神神経発達予後, 周産期医学. 2018.09;48(9):1126-1128.より
2. 3歳時点での発達の検討
吉田らは、複雑な先天性心疾患児67名と健常児81名における、3歳児の発達状況をBayley検査という手法で比較しています。
その結果は、
・先天性心疾患児の80%は正常範囲内
・しかし、認知・言語 (受容・表出)・運動 (微細・粗大)の全てが健常児と比較して有 意に低値。(健常児が全例が正常範囲内なので当たり前の結果と思います)
・先天性心疾患を、単心室群と2心室群にわけて検討すると、単心室群は2心室群よりも、言語と粗大運動が低値でした。(単心室の方は特に注意が必要ですね)
・極低出生体重児 (1500g未満で出生)と先天性心疾患児は、全ての項目で差がありま
せんでした。
吉田 丈俊、他, 3歳児Bayley発達検査による先天性心疾患児と極低出生体重児の発達予後, 日本小児科学会雑誌. 2018.06;122(6):1010-1017.
3.学童期
欧米の調査では、学習支援を要する心疾患児の割合が15~27%と、健常児の9-12%と比較し明らかに高いことが報告されました。
Mulkey SB, et al, School-Age Test Proficiency and Special Education After Congenital Heart Disease Surgery in Infancy, J Pediatr. 2016 Nov;178:47-54.e1
複雑な先天性心疾患で生まれたお子様は発達についても長期的なフォローしていくことが大事ですね。心臓は大学病院で、発達は当院でフォローしていければと思います。