アレルギー疾患と腸内細菌叢

今年の日本アレルギー学会で、腸内細菌の講演会を視聴し興味を持ちました。先日、アレルギー学会誌で、腸内細菌叢についての解説を読んだので、内容をまとめました。

 

ポイントは、乳児期の腸内細菌叢の偏りは、小児アレルギー疾患の発症に関連する、妊娠中からの継続したプロバイオティクスの摂取が有用そうだけど今後の研究が必要といったところです。

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                            (文献より引用)

参考文献は、

下条直樹, アレルギー疾患とマイクロバイオーム. アレルギー. 2021.02;70 :19-25

 

1.乳児期の腸内細菌叢の偏りは、小児アレルギー疾患の発症に関連する

千葉県農村地区での出生コホート研究では、

・生後1ヶ月でのcatenulatum group(成人型のビフィズス菌)の検出が、アレルギー発症群は、非発症群と比較して高かった。

乳児型のビフィズス菌叢の形成に問題があると発症しやすい?

・生後1ヶ月での糞便中の黄色ブドウ球菌 の検出は生後7ヶ月でのアトピー性皮膚炎の発症率に関連

腸内細菌叢における善玉菌 (ビフィズス菌など)と悪玉菌 (黄色ブドウ球菌) のバランスの乱れは乳幼児期のアレルギー発症に関連?

 

2. 乳児町内腸内代謝物とアレルギー

最近、腸内細菌が産生する代謝産物、特に酪酸に代表される短鎖脂肪酸が注目されていますが、アレルギー発症への関与についてはまだ結論は得られておりません

 

3.アレルギー発症の予防とプロバイオティクス

最近のメタ解析 (複数の論文を集めて解析)では、妊娠中から出生後までに投与のみが効果ありとなっています。(妊娠中あるいは出生後のみでは、投与し場合と比較し有意な差はありませんでした

千葉県での研究では、乳児湿疹を発症した児の母親は、発症しなかった児の母親に比して、妊娠12週目のBifidobacteriumが少ないという結果でした。

ビフィズス菌を標的とする介入は妊娠早期より行う方が有効な可能性があります