エスカレーターの事故に注意

日本小児科学会雑誌では、小児科医が共有したほうがよい事故情報が掲載されます。2021年4月号の学会誌からの報告を共有したいと思います。

以下、学会誌の内容を簡潔にまとめました。

日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert (傷害速報) No.103 エスカレーターと壁に挟まれて受傷した体幹外傷 日児誌2021: 125:687-690

 

症例は5歳男児。児がアウターデッキに両足を載せてハンドレールに両腕をかけたところ、ハンドレールに引っ張られエスカレーターの外側を昇ってしまい、そのまま引き込まれる形で壁とハンドレールの隙間に体が挟まれてしまいました。

 

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本文献の図を引用

胸部圧迫による窒息, 左肘挫傷と下顎擦過傷を起こし、救急搬送後に入院となりましたが、幸い、後遺症なく回復しております。

・東京都消防庁によると、2013~2017年の5年間でエスカレーター関連の事故で救急搬送された5歳以下の児は34例でした。最も多いのは、ハンドレールの引き込み口 (インレットガード)でした。本児と同様に、ハンドレールの周囲の壁や柵などで挟まれた事例は3例でした。

東京消防庁<安全・安心><トピックス><エスカレーターで起きる乳幼児のはさまれ事故に注意!>

 

・2007年に平塚市で学童がエスカレーターと固定式アクリル板の約15cmの隙間に頸部を挟まれ、1.5m程度そのまま引きずられるという事故が起こりました。その時期に発刊された保険毎日新聞で1994~2007年の間に同様の機序で受傷した小児例が5例と報告されています。 コラム−防災あれこれ

 

エスカレーターの多くは、人または物が強くはさまれた状態を検知し、緊急停止する安全装置があります。しかし、インレットガードではなく、今回のように、ハンドレールと周囲の壁や柵に挟まれた場合、ハンドレールに伝わる摩擦のエネルギーが少なく、安全装置が起動しない可能性があります

 

・今後の対応策としては、アウターデッキに駆け上がり防止版を設置する, 警備員の見回り, いたずら防止の館内放送があげられます。また、固定式アクリル板では、エスカレーターのハンドレールから垂直20cmまで下げなければならないと建築基準法で定められておりますが、実際にはそこまで達していないこともあり、前述の平塚の事件ではその点を問題視されました。固定式アクリル板の基準が守られているか老朽化が進んでいないかなどの定期的な見直しは必要です。エスカレーターのハンドレールと壁に隙間の長さについても今後検証する余地はあると思われます。 以上、学会誌より

 

子ども目線では、エスカレーターって遊びたくなる場所ですよね。私も小さい頃は逆走したりして遊んでいました。息子もアウターデッキに足をかけそうなので気をつけないといけないなと気が引き締まりました。

この報告を読んでから商業施設のエスカレーターの固定アクリル板をチェックしていますが、今のところ問題ある場所に遭遇はしておりません💦