ヒトパピローマウイルスと子宮頸がんワクチンについて

ヒトパピローマウイルスが子宮頸がんの原因で、生涯に80%以上の方が1度は感染することを前回はお話ししましたね。今日は、ヒトパピローマウイルスとワクチンについて、より踏み込んで解説していきたいと思います。

 

ヒトパピローマウイルスについて】

ヒトパピローマウイルス(HPV)には、200種類以上の病原性がありますが、がんを引き起こす可能性のあるウイルスはごく一部です。

高リスク型:子宮頸がんの原因です。HPV16型, HPV18型が中心

       その他、31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 59, 66, 68型などがあります。

低リスク型尖圭コンジローマの原因です。HPV6型, HPV11型があります。

 尖圭コンジローマとは

 

ここからは、高リスク型の中でも、特に重要なHPV16, 18について解説していきます。

1.子宮頸部病変の強さとの関係

病変が強いほど、HPV16, HPV18の陽性率が高くなっています。

f:id:teammanabe:20210430051815j:plain

Iwasaka T, et al.Int J Gynecol Obst, 62:269-277,1998より引用し改変

2)子宮頚がんにおける年代別HPV16/18

40歳未満では、HPV16/18陽性率が極めて高くなります。

f:id:teammanabe:20210430052743j:plain

横山正俊. 子宮頸がん, 臨床と研究 2019; 96 (2); 71-76 より引用し改変

【子宮頸がん (HPV) ワクチンについて】

HPVワクチンは、HPVの殻の大部分を構成するL1タンパク質を遺伝子組み換え技術で生成したウイルス様粒子 (virus-like particles:VLP) を抗原として作られたワクチンです。

ウイルスのDNAを含まなのいので、感染力がなく安全です。

f:id:teammanabe:20210430054326j:plain

左側がウイルス、右側がワクチン。DNAを含まないので感染力はありません。鈴木光明. 子宮頸がんの現況と予防に向けて.外来小児科2019; 22 (1); 45-54.

現在、わが国で定期接種となっているのは以下の2種類です。

サーバリックスR (2価):HPV16, HPV18 (高リスクHPV) をカバー 

ガーダシルR (4価):HPV16, HPV18に加えて、HPV6, HPV11(低リスク) をカバー

対象は、12歳になる年度初日~ 16歳になる年度末日までの女児です。

これで約70%のHPV感染が予防可能となります。

計3回の接種が必要で、スケジュールは、

サーバリックス:2回目が初回より1カ月後、3回目は初回より6カ月後

ガーダシル:2回目は初回より、2か月後、3回目は初回より6カ月後

となります。

※当院では、ガーダシルを採用しています。

 

また、自費 (26,000円/回×3) となりますが、昨年度に、9価ワクチンである、シルガードRが承認されました。ガーダシルR に含まれる(HPV16/18/6/11)に加えて、高リスク型の31/33/45/52/58

を含みます。これにより約90%のHPV感染が可能となります。

 

ワクチンは100%を予防できないので、検診も必要です