新型コロナウイルスと喘息

日本アレルギー協会の機関紙で、アレルギー専門医の先生2人の対話形式で掲載された、「新型コロナウイルス感染症と喘息」についての記事を紹介します。

(Vol22 (3), 2020)  

Q1.喘息の患者さんは新型コロナウイルスに感染しやすいですか?

A.むしろ感染しにくいことがさまざまな報告からわかっています。

( 解説 ) 一般的に、喘息を持つ方は、持たない方と比較して、呼吸器ウイルス感染症(ライノウイルスなど)が喘息増悪の原因として最も多いことが分かっています。しかし、新型コロナウイルスの場合はむしろ感染しにくい可能性があります。

(1) 日本呼吸器学会による約1,500人アンケート調査によると、新型コロナウイルスに感染した人の喘息合併率は3.4%。成人全体の喘息の患者さんの割合は約10%であり、それと比較すると少ない。

(2) 中国やアメリカでは成人全体の8%が喘息をもつが、新型コロナウイルスに感染した人の喘息合併率は5.3%。

Q2.喘息の患者さんが新型コロナに感染しにくい理由は?

新型コロナウイルスは、ヒトの体内にACE2受容体を介して侵入しますが、喘息の患者さんはこの受容体の発現が高くないことが報告されています。理由としては、治療薬である吸入ステロイド薬や喘息の炎症に関わるIL-5やIL-13という分子がACE2受容体の発現を下げるからと考えられています。

Q3.喘息は新型コロナウイルス感染症の重症化のリスク因子になりますか?

A.喘息は重症化のリスク因子にならないと考えられています。

(解説) 喘息の中では、原因アレルゲンが特定できない非アレルギー性の喘息や経口ステロイド薬の服用はリスクをわずかに高めることが報告されていますが、糖尿病や高度の肥満に比べるとそのリスクは低いです。

 

喘息があるからといって過度に心配する必要はなさそうです。しかし、日頃から、治療薬をしっかり継続し、喘息症状が出ないようにコントロールしていくことが大事です。

2009年の新型インフルエンザの時は、基礎に喘息のある人は重症化すると言われていましたが、私の印象では、吸入ステロイド薬をきちんと服用している人はそれほど重症化せず、治療を中断しがちな方が重症化しておりました。