今日は、外来でアレルギー疾患に対して使用することの多い抗ヒスタミン薬についてお話ししたいと思います。
まずは、結論から
アレルギー疾患に対しては、鎮静性の低い第2世代の抗ヒスタミン薬を使用します。
セチリジン (ジルテック), レボセチリジン (ザイザル), フェキソフェナジン (アレグラ), オロパタジン (アレロック ), ビラスチン (ビラノア), べポタスチン (タリオン), エビナスチン (アレジオン), デスロラタジン (デザレックス), ロラタジン (クラリチン), ルパタジン (ルパフィン) など
運転する方は:フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン、ビラスチン
妊娠中の方:ロラタジン, セチリジン
授乳中の方:基本的に第2世代であれば問題ないが、成育医療センターのHP
授乳中に安全に使用できると考えられる薬 - 薬効順 - | 国立成育医療研究センター
では、フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン
後は、適応年齢や服用回数 (1回or2回), 好きな剤型 (錠剤, OD錠, 粉, シロップ)
で使い分けています。 ※シロップはザイザルシロップのみ
もっと詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。
1.抗ヒスタミン薬の分類
ヒスタミンとは、アレルギー疾患に関与する基本的な化学物質です。抗ヒスタミン薬は1937年に開発され、第1世代と第2世代に分類されます。
(a) 第1世代抗ヒスタミン薬
・親油性で血液脳関門を通過→脳内ヒスタミンH1受容体占拠率が50~90%と高い
→鎮静作用が強く、眠気, 集中力低下, 倦怠感をきたし、高容量で興奮状態を生じる
場合がある
・抗コリン作用による、口渇, 粘膜感想,尿閉, 頻脈などの頻度が高い
・小児においても鎮静作用の発現頻度は高く、7歳時に鎮静性抗ヒスタミン薬を長期間 使用した場合にIQが10程度低下する可能性が報告されている。
d-クロルフェニラミン (ポララミン), ジフェンヒドラミン (ペリアクチン), ヒドロキシジン (アタラックス)など
(b) 第2世代抗ヒスタミン薬
・親水性のカルボキシル基(-COOH)やアミノ基 (NH2)を導入し血液脳関門の通過性を
低下→非鎮静化
・H1受容体の選択性を高めて抗コリン作用による副作用を軽減
・血中半減期が長く(=長時間効果を発揮し)、より即効性が期待できる
・カルボキシル基型とアミノ基型に分けられる
・カルボキシル基型は、H1受容体に特異性が高く第1選択薬として使用しやすい
以下、一般名(先発品の商品名)
レボセチリジン (ザイザル), フェキソフェナジン (アレグラ), オロパタジン (アレロック ), ビラスチン (ビラノア), べポタスチン (タリオン)
・アミノ基型は特異性が低く、他の受容体も遮断する
例えば、抗ヒスタミン薬は一般的には鼻閉には無効であるが、ルパタジンはPAF受容体を遮断することにより、鼻閉にも効果を発揮する。
エビナスチン (アレジオン), メキタジン (ゼスラン), デスロラタジン (デザレックス), ロラタジン (クラリチン), ルパタジン (ルパフィン) など
2.抗ヒスタミン薬の 鎮静性について
脳内H1受容体占拠率の程度により、50%以上を鎮静性, 20~50%を軽度鎮静, 50%以上を鎮静性としている。第2世代の抗ヒスタミン薬はおおむね30%以下である。鎮静と非鎮性で治療効果に差のないことより、非鎮静性の使用がすすめられる。
運転については、フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン、ビラスチン
は他の抗ヒスタミン薬と異なり、注意事項の記載がない
(2) 薬物動態について
薬物が最高血中濃度に到達する時間は、第1世代のクロルフェニラミンが中央値3時間に対して、第2世代の抗ヒスタミン薬は2時間を切るものも少なくない。
さらに、第2世代の抗ヒスタミン薬は、第1世代よりも血中半減期(T1/2)が長い。つまり効果が長期間持続する。
(3) 妊娠・授乳中の抗ヒスタミン薬
これまでの研究により、先天性異常が増加しないことが示されているが、多くは第1世代抗ヒスタミン薬に関するもの、第2世代では、ロラタジンとセチリジンが先天性異常に関連しないことが示されている。
授乳中の薬物投与は母乳中への移行はわずか。ただし、鎮静性の第1世代抗ヒスタミン薬は乳児の易刺激性や傾眠を起こす可能性があり、第2世代がのぞましい
参考文献
池田政憲, アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018-抗ヒスタミン薬の臨床薬理と使用のポイント-, アレルギー 2020; 69; 883-892
谷内一彦, 薬理作用から見た理想的な抗ヒスタミン薬治療,日耳鼻 2020; 123;196-204