新型コロナウイルスの伝播様式

今日は新型コロナウイルスの感染経路について解説します。

 

(1) 飛沫感染

感染経路の主体と考えられています1)。飛沫とは、咳嗽やくしゃみにより飛び散る細かい水滴 のことで、このなかに含まれる病原体が、鼻や眼などの粘膜に侵入することで感染します。飛沫のうち直径が大きなものは、約1-2m飛んですぐに地面に落ちます。ソーシャルディスタンスはこれを根拠に設定されました。

(2) 接触感染

ウイルスを含む飛沫により汚染された手指や環境表面 (ドアノブや電話など)を介しての感染です。ヒトの皮膚の表面では、新型コロナウイルスの生存時間は約9時間に対し、インフルエンザウイルスの生存時間は約1.8時間であることが報告されています2)。このことより、インフルエンザウイルスA型と比較して接触感染の拡大リスクが高いことが示唆されました。こまめな手洗いが大事ですね。スーパーマーケットなどすぐに手洗いできない状況の時は、アルコール消毒をしましょう。

(3) エアロゾル感染

飛沫のうち直径が小さいものは、時間をかけてゆっくり落下したり、落下する途中で乾燥して再び空中に浮き始めたりします。このように気体中に液体ないしは固体の微粒子が広がった状態をエアロゾルと呼びます。エアロゾルは長時間空中に浮遊するため、密閉された空間で感染者と同じ室内にいた場合、これを吸うことで感染を起こしてしまう可能性があります。従って、定期的な換気は重要です。なお、エアロゾル感染は現時点では、主要な感染経路とは考えられておりません1)。理由は、基本再生産数という、1人の感染者が免疫を持っていない集団の中で何人に感染を広げるかを示す指標が2.5程度と、エアロゾル感染を起こす麻疹 (基本再生産数12~18)と比較して低いからです。

 

参考文献

1.新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 診療の手引き第4版, 厚生労働省

2. Ryohei Hirose,et al. Survival of Severe Acute Respiratory Syndrome

Coronavirus 2 (SARS-CoV-2) and Influenza Virus on Human Skin: Importance of Hand Hygiene in Coronavirus Disease 2019 (COVID-19), Clin Infect Dis. 2020 Oct 3