日本児童青年精神医学会参加記2  ためこみ症 学生時代を振り返って

現在、Webで日本児童青年精神医学会が配信されています。

その中で学んだことを記事にします。記事というか私自身のメモですね・・・。

数日前の記憶で記事を書いております、しかもメモを取る習慣がない (というか、字が汚く自分でも読めない)ので 、講演内容のすべてではなく、特に私の記憶の残っている事に限定されます。また、一般の方にとって、比較的分かりやすい内容のみの紹介といたします。

今回は、九州大学の中尾智博先生による、「ため込み症の臨床~ASDADHDとの関連を中心に~」を紹介します。

 

ためこみ症とは、色々なものを本来必要とする以上に過剰に集めてしまい (物品を保存したいという強い衝動)、かつ捨てられない (捨てることに対して生じる強い苦悩)ために家の中があふれてしまい、生活に支障をきたす状態です。

よくテレビで取り上げられる「ゴミ屋敷」をイメージしてくださると分かりやすいと

思います。

 

DSMDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)という、アメリカ精神医学会が出版している、精神疾患の診断基準・診断分類では、強迫関連症の一つとあいて独立しています。

強迫症とは、あることに対する不安があり (強迫観念)、それを打ち消すための行動を儀式的に繰り返す(強迫行為)ような状態です。例えば、手が汚れているか気になり、ずっと洗い続ける, 家の戸締りを忘れていないか心配で何度も確認するためなかなか外出できない、などです。

 

ため込み症は、病状への不快感がない(つまり病識に乏しい), 自らは助けを求めず周囲が助けを求める, などの点で他の強迫症とは異なります。

実際に、ためこみ症 vs 強迫症・健常者で、脳画像を比較すると、ため込み症患者には脳の前頭葉という部位の有意な拡大がみられるようです。

 

ゴミ屋敷というと年配の一人暮らしの方というイメージをお持ちかもしれません。

実際は、若年発症の割合が高く、57%が14歳までに発症しておりました。

有病率は、他の強迫症は若年層と老年期に2つピークがあったのに対して、ためこみ症は、年齢増加に伴い線形に増加しておりました。

 

自閉スペクトラム症 (ASD)でため込み症が説明つくのではないか?と考える人もいました。たしかに、ASDも、こだわり行動は、ため込み症の収集癖と似ているかもしれません。そこで、AQテストというASDの傾向をみる検査 (私の外来ではルチーンで行っています)を行ったところ、スコアはASD> ためこみ症> 他の強迫症, 不安症となりました。さらにSI-Rというため込み症を評価する検査をしたところ、スコアはため込み症>ASD>OCD, 不安症という順になりました。すなわち、ミ屋敷化はASDの症状だけでは説明がつかないことが示されました。

 

また、ADHDも、整理整頓ができないことから、ため込み症との関連が指摘されたこともありました。ため込み症の20%がADHDの診断基準を満たします

 

ため込み症の治療は、なかなか困難ですが、全部捨てるのだけではなく, 大事なものとそうでないものを分類する、領収書は1年たったら捨てる、などを治療者と患者さんが一緒に取り組んでいきます。

 

私の大学時代の先輩で、ゴミ屋敷状態の方がいました。本来は私の5学年上だったのですが、関西の超一流の中高一貫校を出身にかかわらず、留年→放校→再入学を繰り返し、4年時に同級生になりました。とりあえず在籍していた囲碁・将棋部の先輩だったので、話し相手になったりはしましたが、彼の自宅を見た時は唖然としました。全く足の踏み場がないのです。また、ゴミの臭いがついており、1度指摘したのですが、本人は気にしていませんでした。私の出身大学は、同じ学年を2回連続で留年すると放校(クビ)になります。再入学のチャンスは1回しかありません。彼は2回目の4年生で

後がないにもかかわらず、必死さがありませんでした。血液内科や公衆衛生という科目のテストはあらかじめ再試験がないことが予告されており、普通ならこうした教科は

必死に取り組むのですが、やる気が出ないのを理由に勉強せず、見事に単位を落としました。それどころか、私に対して、「こういう教科ならなんでもっと早く資料をくれなかったんだ」と文句を言ってきました。普段の会話中にも、体を揺らすしぐさがみられており、彼の場合は、ADHD不注意型だったのかなと思います。最終的に彼は学校を首になり、実家からも追い出されました。その後、コンビニのバイトで生計を立てているところまでしか知りません。きちんと診断され、治療を受けられれば彼の人生は変わっていたかもしれないなと今でも時々思い返します。