スチーム式加湿器に注意

 日本小児科学会雑誌では、小児科医が共有したほうがよい事故情報が掲載されます。2020年9月号の学会誌からの報告を共有したいと思います。

以下、学会誌の内容を簡潔にまとめました。

日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert (傷害速報) No.93 スチーム加湿器による背部熱傷 日児誌2020: 124:1455-1457

 

症例は1歳男児。スチーム式加湿器はプラスチック製の棚の上に設置されていた。児が棚の近くでうつぶせになって遊んでいたところ、2歳の姉が、引き出しを出して棚をよじ登ったため、棚が倒れてしまった。加湿器が本児のそばに落ち、ふたが外れ、背中に熱湯がかかってしまった。冷却しつつ医療機関に受診し、入院となり、点滴治療と

軟膏処置をうけ、7日後に軽快退院した。

 

この加湿器は、水分を蒸気にする加熱部に100mlの熱湯 (100度), 加熱部につながる水槽に200mlの湯(48度)が存在し、給水タンクは4Lであった。本製品には転倒時の流水防止機能はなかった。本製品は転倒した場合、最初に、加熱部の100mlの熱湯 (100度), 続いて水槽の200ml(48度)が外に流出する。両者が完全に混ざり合ったとしても理論上の水温は65度である。100度の熱湯は1秒で、65度のお湯は2秒の接触でⅡ°以上の熱傷となることが知られている。

f:id:teammanabe:20201103213647j:plain

文献より引用


加湿器の種類

加熱式:スチーム式, 加熱超音波式 (熱湯の危険あり), 加熱気化式

(加熱気化式は水を吸い上げたフィルター部のみを加温し熱湯が発生しない構造)

非加熱式:気化式, 超音波式

f:id:teammanabe:20201103213711j:plain

文献より引用

 

国内では本事例のように、子どもが電源を引っ張り、加湿器が落下し、流出した熱湯により熱傷を受傷した乳児例が消費者庁より複数報告されている。

 

予防策としては、こどもの手の届かない場所に加湿器を設置するとともに、安全な加湿器を選択することである。最近では、スチーム式加湿器であっても、密閉式構造により、機器転倒時の流水防止機能を備えたものも販売されている。

(以上、文献より)

 

外来で、クループの児に加湿をすすめることがあります。加湿器の種類も確認しなければいけないと思いました。