当院では、B型肝炎ワクチン未接種の方に接種をおすすめしております。
理由は、
・B型肝炎ウイルスへの感染は稀ではない。
・気づかぬうちに、唾液, 汗, 涙, 尿などの体液より感染する可能性がある。
・最近、欧米由来の遺伝子型Aという持続感染しやすいタイプが増えている
などです。
1.B型肝炎とは
HBV感染には、一過性の感染と持続感染 (キャリア)があります。
(1)一過性の感染
一過性の感染は、70~80%は自覚症状のない不顕性感染で, 20~30%が急性肝炎を発症し、なかには死亡率の高い劇症肝炎に至る場合もあります。わが国では、毎年2,000人以上の方が急性肝炎を発症しております。
これまでB型急性肝炎にかかっても治癒したらそれで完治と考えられていましたが、最近の研究で、一過性の感染でも、B型肝炎ウイルスの遺伝子は肝臓内に一生残り、抗がん剤治療などで免疫力が低下すると重症の肝炎を発症することがわかりました
(図1.①)
(2)持続感染 (キャリア)
ほとんどの方が無症状ですが、約10%の方が慢性肝炎となり、肝硬変や肝がんなど難治性の肝疾患を発症します。
(3) ここ最近の問題点
これまでわが国では、HBVはほとんどキャリア化しない遺伝子型Cが中心でしたが、最近では、欧米由来の急性肝炎後に慢性化しやすい遺伝子型Aによるキャリアの増加が問題となっています。この遺伝子型Aは、急性肝炎発病後も、高ウイルス量の期間が長く、成人感染例の7~8%はキャリア化すると言われています (図1.②)
2.B型肝炎ワクチンの歴史
わが国では、HBVキャリアの母より出生した児を対象に、1985年よりB型肝炎ワクチンの接種を開始し、母子感染によるキャリア発生は減少しました。
しかし、B型肝炎は血液だけでなく、唾液, 汗, 涙, 尿などの体液も感染源となることが明らかとなり、父子感染や保育所での感染例も報告されておりました。また、低年齢児ほどHBVに感染後のキャリア率が高いことより(図2)、2016年10月より乳児への公費によるワクチンの接種が開始されました。
3.B型肝炎ワクチンの自費接種について
全世界では3.5人に1人の割合で、感染あるいは感染の既往があると言われています。わが国では、毎年2,000人以上の方が急性肝炎を発症しておりますが、2/3以上は感染しても症状が現れない、不顕性感染なので、感染者数は実際にはもっと多いはずです。つまり、気づかぬうちに感染し、大切な家族やパートナーにうつしてしまう可能性があります。また、前述のように、慢性化しやすい遺伝子型Aが国内での報告例が増加しております。したがって、ワクチンが公費化される、2016年以前に出生した方は、、B型肝炎ワクチンによる接種をおすすめしております。