新型コロナ関連の講演会より

9/19 (土)の午後は、神奈川県小児科地方会 (県内のミニ学会) にweb参加し、

藤沢市民病院・臨床検査課の清水博之先生による、新型コロナウイルスの講演を拝聴しました。一般の方にとっても、有用な情報を共有させていただきます。一部、私の解説も加えております。一部聞き逃しや私の誤学習があるかもしれませんが、その都度、加筆・修正していきたいと思います。

 

【小児例の状況・特徴について】

9/16現在の(国内の状況)

0-14歳は、計425例 (症状あり290名, 症状なし135名)で、症状ありのうち、193例 (66.6%) が家庭内感染。 重症肺炎は2例のみで、いずれも10歳代、死亡例は0名

 

・学校における感染拡大リスクは少ない?

オーストラリアの研究を紹介:15の学校。生徒9名、教師9名の陽性者が発生。濃厚接触者は863名いたが、感染したのは2名のみ

以前のブログ記事で学校内感染が多くないことを紹介しましたね。

              ↓

teammanabe.hatenablog.com

 

感染経路として、

小児→成人:あまりなし、小児→小児:たまにあり、成人→小児:多い

小児は重症化が少ない。その理由として、ACE2受容体という、ウイルスが体の細胞内に侵入する入り口 (ウイルスは自分では増殖できない。ACE2受容体から、細胞内に寄生した後に、増殖を始める)が成人より少ないからと推定されている。

米国ではインフルエンザでなくなる児の方が多い

(米国と日本の医療状況は違いますが・・。日本は体調が悪いとすぐに医療機関を受診できますが、米国では受診のハードルが高い。タミフルの使用量も日本が世界全体の70%と言われている)

・ただし、乳児(1歳未満)の発症例は、他の年齢層と比較し、重症化のリスクが高く注意を要する

 

【成人を含めた全体の特徴】

・致死率は1.9%。80歳代の死亡率は15%

・男性は感染者数が多く、重症化率も高い

・成人では、遷延する強い倦怠感が特徴的

重症例は経過中に下痢がみられることが多い印象

・発症から7日後の悪化に注意 (半日単位で急激に悪化するようです)

・国内の味覚・嗅覚障害は10~15%

以前に私が紹介した論文より、割合が少ないですね。

 

teammanabe.hatenablog.com

 

その後、味覚・嗅覚障害について白人はアジア人の3倍多いという報告も出ています

(出典は後日、調べて追記します)

鼻汁がなく、味覚・嗅覚障害があれば、新型コロナウイルスの可能性を考えないといけないですね。

妊婦は重症化のリスクが高い。妊娠していない女性と比較して、ICU管理率1.6倍、気管内挿管率1.9倍。

・剖検例 (亡くなった後の解剖)の検討によると、77%にコロナウイルスが全身の臓器より検出された。

 

【検査について】

抗原検査について

感度 (検査での陽性率/新型コロナ感染例)低く、偽陽性にも注意 

偽陽性とは、新型コロナでない人が新型コロナと診断されてしまうこと。粘性の強い鼻汁や血液が混じると非特異的反応により起こりうるとのこと。頻度の少ない時期に、心配だから、念のためとむやみやたらにやるべきではありません。

PCR検査について

陽性率は、BAL(気管支肺胞洗浄液)  93%, 喀痰73%, 鼻咽頭 63%, 咽頭32%

 便29%, 血液1%,   喀痰は鼻咽頭咽頭の中間

喀痰によるPCR検査を実施する医療機関が増えてくることが予測されますが、過信してはいけませんね。また、喀痰は検査30分前に飲食を控えることがあり、採取も大変な様です。

・抗体検査について

抗原検査とPCR検査が、現在の感染を調べる検査に対して、抗体検査は過去の感染を調べる検査です。発症から2週間で、IgG, IgM抗体が上昇します。他のウイルスでは、

IgM→IgGの順に上昇するのですが、なぜか新型コロナは同時に上昇したり、IgGの方が先に上昇します。また、中和抗体というウイルスの病原性を抑える抗体が、3カ月以内に消失する可能性についても報告されており、ワクチンの効果の持続に影響がありそうです。

【治療について】

・カトレラ (抗HIV), クロロキン (抗マラリア)は臨床試験で有効性が証明されず、使われることはない

・アビガンは、藤田保健衛生大の検討では、患者数の問題もあり、良いデータではなかった (一般的に、対象者数が多いほど、統計学的な差は出やすくなります)。他国で臨床試験中でその結果待ち。

現時点で強いエビデンスがあるのはレムデシビと, DEX(ステロイド)のみ

ステロイドは、最初は反対意見が多かった。酸素投与例に限定すると発症28日時点の死亡率を有意に低下させる、ことが明らかになった。

レムデシビルは元々は、エボラ出血熱用に開発されたが、対エボラでは臨床試験で有効性を証明できず、使われなくなった。軽症例には投与する意義は少なく、酸素投与を要する中等症以上の症例には有効だが、副作用の肝機能障害、腎機能障害に注意を要する。

・小児に関する治療のエビデンスはほとんどなし。

 

とても分かりやすい講演で、新型コロナに関する最新の知識を整理できました。

新型コロナ感染の情報は、こまめに記事化していきたいと思います。