論文紹介:軽症・中等症の新型コロナウイルス患者の年齢とウイルス量の関係

久しぶりに新型コロナ関連の論文を紹介します。

 

Age-Related Differences in Nasopharyngeal Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2) Levels in PatientsWith Mild to Moderate Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)

Taylor Heald-Sargent 1, William J Muller 1 2, Xiaotian Zheng 1 2, Jason Rippe 1, Ami B Patel 1 2, Larry K Kociolek 1 2

JAMA Pediatr. 2020 Jul 30;e203651.

 

【場所】イリノイ州シカゴ

【対象】生後1か月~65歳のPCR検査による新型コロナウイルス陽性例

除外基準:酸素投与を要する重症例, 症状出現より1週間以上経過, 症状出現時期が不明

つまり、発症から1週間以内の軽症および中等症の症例が対象。

【方法】

・患者145例を5歳未満の幼児(46例), 5-17歳の年長小児(51例), 18-65歳の

   成人(48 例)に分けた。

咽頭ぬぐい液検体のPCR増幅サイクル閾値CT値低値ほどウイルス核酸量が多 い)を比較した。

※CT値とは:PCRとはウイルスの遺伝子を増幅させる検査方法です。CT値とは、ウイルス遺伝子の量が設定した量に到達するまでの増幅回数を意味します。検体中のウイルス遺伝子が多ければ、少ない増幅回数で十分に検出でき、逆に、ウイルス遺伝子が少なければ、検出可能になるまでに要する増幅の回数が多くなります。


・CT値の中央値(四分位範囲) すなわち、真ん中の人 (上25%-下25%)のCT値は、

 5-17歳は11.1 (6.3-15.7), 18-65歳は11.0 (6.9-17.5)と同等であった。それに対して、

 5歳未満児は6.5 (4.8-12.0)で、CT値が有意に低かった。
すなわち、乳幼児の方がウイルス量が多く、この違いは10-100倍の違いに相当するようです。

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年齢層ごとのCt値 文献より引用

       太い線が中央値、ボックスが上位25%-75%の範囲

【コメント】

乳幼児は、多くのウイルス遺伝子を有するといえます(=実際のウイルス量ではない)

無症状の場合は、どんな結果になるか気になるところです。また、小児例が周囲の感染力が強いかどうかは今後の検証が必要と思われます。