アナフィラキシー時の対応について

当院ではアナフィラキシーを含めたアレルギー反応の対応について、丁寧に説明しておりますが、毎年のエピペンの更新時に皆さんに質問すると意外と忘れていることが少なくありません。なかには、エピペンの注射部位を忘れている方もいました。いつでも復習できるようにしておこうと思い、記事にしました。

 

アナフィラキシー時は、エピペンRの筋肉注射が最も優先されるべき治療です。大きく分けて、1. エピペンRを注射するかどうかの状況判断2. エピペンRの注射手技の2つがポイントとなります。

  • 状況判断について

アレルギー症状が出現した児を目の前にしたとき、まずはその症状がどれぐらい重症で

あるかを判断することが重要です。図1.は、アレルギー症状の重症度を示したものですが、左から軽症、中等症 (病院受診が必要なレベル)、重症 (エピペンR注射, 救急車要請が必要なレベル)となります。重症の欄の症状がどれか一つでもあてはまれば、エピペンRを注射し、救急車を要請する必要があります

全身が赤くなり, 顔面が腫れるなど強い皮膚症状は、一見重症に見えますが、皮膚症状のみであれば、生命維持の危機には関連しないので、重症ではなく、中等症に位置づけられます。その一方で、呼吸器症状は、生命維持の危機に関連するので、散発的な咳であっても、重症度は軽症ではなく、中等症と判断します。

ここで、注意しなければならないことが3つあります。1つ目は、「皮膚症状がない=アレルギーではない」と判断してはいけないことです。症状の多くは皮膚症状ですが、必ずしも皮膚症状が一番先に出るわけではありませんし、皮膚症状を認めない場合もあります。2つ目は、中等症か重症か、すなわちエピペンRを注射するかどうか迷ったら注射を選択しましょう。なぜなら、エピペンRによる副作用は、一過性の軽微なものが多く、逆に使用するタイミングが遅れた場合は、取り返しのつかない状況におちいる危険があるからです4)最後に、誤食直後に軽症または無症状の場合にも、お子様から目を離さず5分毎に症状を観察しましょう。アナフィラキシー例のうち約20%の患者さんは原因食物の摂取後60分以降に症状が出現しています1)。また、最初は症状が軽度であっても時間とともに重篤な症状となる場合があります。

 

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アレルギー症状の重症度


エピペンの注射手技について

図2のように、① ケースから取り出す, ② エピペンを利き手で持ち、グーで握る (緊急時に慌てて、針の出るオレンジ側に親指を当てて注射すると誤射となる) ③利き手と反対側の手で青い安全キャップをはずす, ④オレンジ側を大腿外側中央に押し当て、5つ数える, ⑤オレンジ色のカバーが伸びたことを確認 (伸びていなければ再注射), ⑥エピペンを体から離し、注射部位をもむ、の手順で注射をします。

注射は迅速性を優先するため、衣服の上からでも注射可能です。また、人手がある場合は、児の太ももの付け根と膝をしっかりと押さえ動かないように固定するとよいでしょう。

注射後のポイントは、基本的に仰臥位(仰向け)とし、15~30cm下肢を高くします。それにより、血液が心臓に戻り、脳への血流を保ちやすくなります。

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エピペンの注射方法

文部科学省のホームページ(http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1355828.htm) にある自習用資料は比較的わかりやすいです。是非一度ご覧ください。

 

参考文献

1.海老澤元宏. アナフィラキシー対策とエピペン.アレルギー 2013; 62:144-154.