接触型体温計と非接触型体温計の比較

コロナ感染拡大により、非接触の体温計を使用する商業施設が増えてきていると思います。博物館, Dr.ストレッチ, 行きつけの歯科医院などなど。

当院では、私が勤務する以前に、非接触性体温計の利用を試みたのですが、あてにならないということで、ずっと眠っておりました。

 しかし、接触型の体温計を使うことに抵抗を持っている方は少なからずいらっしゃいます。また、スタッフに非接触型はどうあてにならなかったのか確認しましたが、明確答えは返ってきませんでした。発熱の程度によっても異なるのではないのか?そこで、外来・予防接種にいらした方にご協力いただき、接触型・非接触型両方の体温計で体温を測定させていただくこととしました。

 

合計で59例の方に協力していただきました。

年齢も1歳未満:11例, 1歳:12例, 2,3歳:11例, 4-6歳:8例,7-11歳:10例, 12歳以上:7例と幅広い年齢層となっております。

 

結果1.

全体像を示します。

縦軸が非接触型、横軸が接触型となっております。数字はそれぞれの体温です。

37.5度以上を発熱と考え、黒いラインをひいております。

 

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全体の傾向

結果2.

発熱なし (接触型で37.4度以下)44例にしぼった図です。

接触型が正確であるとしております。 

縦軸が非接触型、横軸が接触型となっております。

接触型で発熱なし (37.4度以下)にかかわらず、非接触型で発熱あり(37.5度以上)と

なったのは、丸で囲んだ2例のみでした (右上)。つまり2/44例 (4.5%)が、発熱がないのに、「発熱あり」(偽陽性)となりました。しかし、最高でも37.8度で接触-非接触間でも

大きな差はありませんでした。    

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発熱なし例における比較


             
    

結果3.

発熱あり (接触型で37.5度以上)の15例にしぼった図です。

縦軸が非接触型、横軸が接触型となっております。

接触型で発熱なし (37.5度以上)にかかわらず、非接触型で発熱なし(37.4度以下)と

なったのは、丸で囲んだ5例でした(左下)。すなわち、接触型だと5/15例 (33%)の発熱を見逃す可能性があるといえます。また、接触-非接触間の差が大きい例も存在しました。

 

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発熱あり例の比較

まとめ

接触型は、発熱のない症例においては、偽陽性がほとんどなく、ずれも小さい

発熱がないのが確認できている状態での使用であれば有用と考えました。

それを踏まえ、

ワクチンの方は、自宅で発熱がなければ、当院では非接触型による計測でもOKとし、当院での非接触型による計測で発熱あれば、接触型で再確認、としました。

 

発熱例については、非接触型は正確でなく、見落としもある可能性がありますが、もう少し例数を増やして、検討を継続していければと思います。

 

ご協力していただいたお子様, 保護者の方、そしてスタッフの皆様に深謝をもうしあげます。

 

注)あくまでも当院のデータで、他の施設だと体温計の種類も異なるので、違った結果になる可能性もあります。