食物負荷試験について

 食物アレルギーの診断や治ったかどうかを確認するには、血液検査はある程度参考になりますが、それだけでは正確な評価ができません。実際に、当該食物を摂取して、症状が出ないかどうかを確認する、食物経口負荷試験が必要です。

 食物経口負荷試験の目的として、⓵ 診断, ②治ったかどうかを確認する ③ リスク評価

が挙げられます。今回は、この検査をどのように食物アレルギーの診療に役立てているか、症例提示しながら解説したいと思います。なお、個人情報が特定されないよう、年齢やデータなど部分的に改変しております。

 

【症例1.】

4歳男児。もともと鶏卵・牛乳アレルギーがあったが治癒している。約2年前に、ミックスナッツを摂取後の眼周囲の発赤、ソバを摂取後に口周囲の発疹というエピソードがあり受診されました。アレルギー検査を実施したところ、ナッツ類・ソバの数値(クラス)は、クルミ3.41 (2), ハシバミ(ヘーゼルナッツ)1.96 (2), カシューナッツ 1.56 (2) アーモンド0.95 (2), ピーナッツ 0.88 (2),そば0.6 (2)と軽度上昇しておりました。

※クラスは0-6までの7段階。昔の通信簿評価のようなもの。

眼や口周囲の発疹でアレルギー反応かどうか微妙なところであったことと、もしアレルギー反応であったとしても、2年たっております。この方は、⓵ 診断,ならびに②治ったかどうかを確認する目的で負荷試験を2か月の間に集中的に行いました。なお、負荷試験は1回に1品目です。なぜかというと、複数の品目を摂取し、アレルギー反応が出た場合、どの食材が原因かわからなくなってしまうからです。

⓵ ピーナッツ3g→症状なし、②アーモンド3g→症状なし ③カシューナッツ3g→症状なし ④ ヘーゼルナッツ3g→症状なし ⑤クルミ3g→症状なし、⑥そば30g→症状なし

と計6回、食物負荷試験を行い、全品目解除できました。

 

【症例2】

1歳の男児。生後7ヶ月時に、ヨーグルトを小さじ1ほど摂取後に、入浴したところ、全身の蕁麻疹と咳嗽 をみとめました。血液検査では、数値(クラス)は、ミルク1.31 (2), 卵白 2.50 (2), オボムコイド2.89 (2)と上がっておりました。

この子の負荷試験の目的は、鶏卵は摂取したことがないけど数値が上がっているので、

⓵診断目的になります。それに対して、牛乳は摂取後に比較的強いアレルギー反応をみとめたので、②治ったかどうかの確認あるいは③リスク評価になります。

負荷試験に結果は、⓵生後11か月、全卵1/32→症状なし、②1歳3か月、牛乳3ml→症状なし、③1歳4か月 全卵1/8→症状なし、④1歳5か月 牛乳12ml→症状なし

でした。この範囲での摂取を継続していただいておりますが、お母様の負担もだいぶ軽減されたようです。

 いきなり大量(例えば牛乳100ml)を負荷すると強烈なアレルギー症状が誘発されるリスクがあります。また、完全除去と比較して、少量の摂取を継続することで治癒が促進されることも報告されています。そのため、当院では、段階的に解除をすすめながら経過をみています。

 

【症例3】

10歳の女児。1歳時に父が近くでナッツを摂取していた時に、体幹に湿疹と赤みをみとめた既往があります。血液検査では、アーモンド0.69 (1), カシューナッツ 7.09 (3), AnaO3(カシューナッツの強いアレルギー反応に関連した蛋白)7.85 (3)でした。

アーモンドはいけそうですが、カシューナッツのこの数値ではとても厳しそうです。

しかし、摂取したらどうなるかわからないよりは、どれぐらい摂取するとどんな症状が出るのかを事前に把握しておいたほうが良いと考え、本人・お母様と相談のうえ、負荷試験を行いました。その結果、アーモンドは3g摂取→症状なしでしたが。カシューナッツは0.2gで、喉の違和感、咳嗽、喘鳴、腹痛が出現しました。その後、学校と負荷試験の結果を共有すると同時に、アナフィラキシー時の備えとして、エピペンを処方しました。

 

このように食物負荷試験は、食物負荷試験の診療を行ううえで欠かせないものなので、当院では積極的に実施しております。現在は、1か月待ちで行うことが可能です。

食物アレルギーでお困りの方は気軽にご相談ください。