今日は、難しい内容なので、便秘の治療薬、酸化マグネシウムを内服していない方は無視してくださいね。
先日、小学生の便秘の患者さんの保護者より、酸化マグネシウム内服中だと、大量の牛乳を飲んでいけないと記載がありますが、大丈夫でしょうか?うちの子、牛乳もたくさん飲むんです(1L/日)という相談がありました。
私は、最初は、「う~ん、マグネシウムの吸収が増えるのかな~?」と答えましたが、適当ではよくないと思いとどまり「推測だけでいい加減なことを言うのはよくない、やっぱり調べますね」と言い直しました。
すると、やはり調べてよかった!
カルシウム (Ca)と弱アルカリである酸化マグネシウムを同時に服用すると、Caの吸収が増えるようです。
腎臓でのカルシウムの吸収が増える
→血液がアルカリ性に傾く
→ますます腎臓でのカルシウムの吸収が増える、という悪循環に陥るようです。
そして、Caが大量に蓄積すると、意識障害, 腎機能障害, 食不振, 嘔気などの症状が出現します。
肝心の牛乳をどれぐらいのむと危ないかですが、過去の報告によると、1日に牛乳を950ml~4750mlを約4-15年間、大量に継続摂取していたようです。
年配の方で、体調をよく崩し、慢性的な脱水状態の方は、より注意が必要なようです。
1日200mlのミルクとアイスクリーム145gの摂取と便秘に対する酸化マグネシウム2g/日(それほど多くない量)でも発症したという報告がありました。
お母さんに対する回答としては、酸化マグネシウムにより、Caの吸収が増えることによるからです。若いので、1日1Lの牛乳ぐらいなら、まず大丈夫とは思いますが、体調の悪い時は、牛乳を飲みすぎないように注意しましょう、といったところでしょうか。
参考文献
1.ミルクアルカリ症候群により高カルシウム血症性クリーゼを来した1例
大嶋 清宏他.
日本救急医学会雑誌. 2013.06;24(6):345-350.
2.少量のミルク摂取と酸化マグネシウム投与により発症したミルク-アルカリ症候群の一例 持続する高張性脱水による代謝性アルカローシスの関与
山田 剛他.
日本腎臓学会誌. 1991.06;33(6):581-586.