今年は、日本脳炎ワクチンの接種に来院される方が例年より少ない印象があります。
新型コロナウイルスの影響もあるかもしれませんが、「日本脳炎ワクチン、必要なの?」と思っている方もいるかもしれません。
答えは、「必要です」
第Ⅰ期:3~4歳に6日以上の間隔を空けて2回、1年後に1回 計3回
第Ⅱ期:9~12歳に1回
の計4回で実施します。
また、以前、ワクチンの接種が差し控えのあいだに接種機会を逃した方への対応が行われております。
平成19年4月1日生まれまでの方+20歳未満
平成21年10月1日生まれまでの方+13歳未満を満たす方は、救済措置の対象
で公費での接種が可能です。
少し、複雑なので、自信のない方は遠慮なく受付に確認してくださいね。
以下に日本脳炎についての記事です。
興味のある方は、ご覧ください。
1.日本脳炎とは?
日本脳炎は体内でウイルスが増殖したブタを蚊が吸血し、さらにヒトを刺すことで感染し脳炎を発症する病気です。
ヒトが感染しても「不顕性感染」といって症状が現れずに経過することが大部分ですが、約250人に1人のヒトが発症します。
日本脳炎には特効薬がありません。
発症した場合、
致死率:30% (特に乳幼児や老人)
後遺症(知能、運動障害など):30~50%
とされ、非常に予後は悪いです。
2.ワクチンの歴史と患者数の推移
ワクチンの歴史と患者数の推移を振り返ってみます。
1950年前後 年間1,000人以上の発症
1954年~小児へのワクチン接種開始 (1967~76年に成人にも)
1972年~発症者は年間100人前後へ
1992年~発症者は年間10人以下へ
1995年4月~小児の定期接種へ
第1期 (3歳×2, 4歳), 第Ⅱ期 (9歳×1), 第Ⅲ期 (14歳×1)
2004年 ワクチン接種後に急性散在性脳脊髄炎 (ADEM) を発症した重症例が報告
ワクチンのマウス脳由来成分が原因の可能性が示唆されました
2005年 ワクチンの積極的勧奨が差し控えられ、第Ⅲ期接種が廃止
2010年4月~ 改良ワクチンが開発されたことを受け、段階的に再開
経過措置として、差し控えのあいだに接種機会を逃した方への対応が行われています。
ここ最近の発症状況は、2006~2013年に西日本を中心に小児7例が発症。2015年には千葉県で生後10ヶ月児は発症、2016年には11人が発症しております。
また、不顕性感染例はワクチン未接種例においては一定数いると思われます。
2007~2011年度のワクチン未接種の1~12歳を対象とした調査では、抗体保有率(自然感染率)は、東日本1%, 西日本7.6%1)でした。
- ワクチンは4回、きちんと接種しましょう
現在は、
第Ⅰ期:3~4歳に6日以上の間隔を空けて2回、1年後に1回 計3回
第Ⅱ期:9~12歳に1回
の計4回で実施されています。
日本脳炎は不活化ワクチンなので、計4回しっかり接種していただくことが重要です。
最終ワクチン接種から15年以上経過したときの抗体保有率を調査した報告によると、
1期3回未満 51%
1期3回 58%
1期3回未満+Ⅱ期 75.3%
1期3回+Ⅱ期 72.3% でした。
特に、Ⅱ期の接種が、長期間の免疫維持に重要であることが分かります1)。
しかし、9歳のⅡ期接種は忘れがちで平成27年度の実施率は約60%でした2)。
4.最後に
日本脳炎は国内では、発症数は少ないですが、いまだに報告されています。
また、急性脳炎は毎年数百人規模で発症しておりますが、約半数は原因不明でこの中に日本脳炎が含まれている可能性もあります3)。
世界では東南アジアを中心に年間68,000人が発症しております。
日本脳炎は過去の感染症ではありません。治療方法はなく、ワクチンで予防するしか方法がありません。しっかり、定期の4回を接種するのが重要です。
参考文献
- 厚生労働省ウェブサイト.厚生科学審議会及び薬事。食品衛生審議会資料3 (http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002r5cgatt/other/5.html
- 厚生労働省ウェブサイト. 定期の予防接種実施者数 (http://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/other/5.html)
- 多屋馨子.臨床とウイルス2017:44 (5):227-234.