新しいワクチン~ 就学前・就学後の3種混合ワクチンについて

 2018年8月に、学童期以降の百日咳とポリオに対する免疫を維持するために、就学前の3種混合(百日咳, ジフテリア, 破傷風)と不活化ポリオワクチンの接種が、日本小児科学会より推奨されました。

 

 百日咳とは、百日咳菌の産生する毒素により、咳が長く続き、発作性の咳き込みにより睡眠障害や嘔吐をみとめる病気です。特に、生後6ヶ月未満の児に重症化のリスクが高く、約25%に無呼吸発作をみとめ1)ます。そのため、入院加療を要することが少なくなく、死に至る場合もあります。また、児童・生徒でも、強い咳嗽により、長期間の欠席を要した例や両眼の眼球結膜出血を呈した例も経験されています2)。

(両眼の出血を呈した症例は、私が、2008年に論文発表し、小学校入学前の追加接種についても言及しています)

 

百日咳は0~1歳時に計4回の4種混合ワクチン (3種混合+不活化ポリオ) 接種により予防しますが、ワクチンにより得られた免疫が数年後には減弱することが明らかになっております3)。実際に2018年に報告された百日咳は5~15歳未満が最も多く全体の64%を占め、さらにそのうちの80%が4種混合ワクチンをスケジュール通り4回接種しているにもかかわらず感染しておりました1)また、重症化するリスクの高い生後6ヶ月未満の症例の42% (感染経路不明を除くと60%) がきょうだいからの感染であり1)、最初に、ワクチンの効果の減弱した学齢期の児が感染し、その後、ワクチンによる免疫の獲得が終了していない乳児に感染することが明らかになりました。そこで、重症化しやすい生後6ヶ月未満児への感染を予防する目的で、日本でも諸外国と同様に、就学前に3種混合ワクチンの追加接種が任意接種として推奨されるようになりました。なお、小学校入学後の接種や小学校6年時の2種混合ワクチン (ジフテリア, 破傷風)を3種混合ワクチンに変更して (ただし任意) 接種することも可能です。さらには、妊婦や妊婦の家族への接種も審議中であり、今後の動向が注目されます。

 

参考文献

1.国立感染症研究所. 2018年第1週から第52週までにNESID に報告された百日咳患者のまとめ.https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/pertussis/pertussis-190327.pdf

2.真部哲治, 他. 両眼出血を呈した百日咳の1例. 日本小児科学会誌2008; 112 (6); 1002-4.

3.岡田賢司. 沈降精製百日咳ジフテリア破傷風不活化ポリオ(セービン株)混合ワクチン(DTaP-sIPV) 接種後の抗体価推移と追加接種の必要性に関する研究.

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000145363.pdf